人狼への転生、魔王の副官【ラノベ感想】

2023年1月10日

人狼への転生、魔王の副官
著:漂月
イラスト:西E田,手島nari
出版:アース・スターノベル, SQEXノベル
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アマゾンのあらすじより

魔王軍第三師団の副師団長ヴァイト――それが、人狼に転生した俺の今の姿だ。 そんな俺は交易都市リューンハイトの支配と防衛を任されたのだが、魔族と人間……種族が違えば文化や考え方も異なるわけで、街ひとつを統治するにも苦労が絶えない。 俺は元人間の現魔族だし、両者の言い分はよくわかる。 だからこそ平和的に事を進めたいのだが……。やたらと暴力で訴えがちな魔族たちを従え、文句の多い人間たちも何とかして、今日も魔王軍の中堅幹部として頑張ります!
ブラック企業勤めのサラリーマンが、異世界転生したら人狼になっていて、一族を守るため魔王軍の傘下に入って人間時代の知識で苦労をしていたら、いつの間にか「おめぇつえぇな」で副官までのし上がる……。なんか大枠だけ書くと良さが伝えられませんね……。
この作品は2015年に1巻刊行で結構歴史があります。時代的に主人公無双とか、最強を超える最強とかが華やかだった頃なので、人狼への転生は私の目を引く存在でした。その理由は内政シーンの描写がかなり多かったためなんです。

感想

人狼部隊の編成から戦闘の方法、支配した町の統治方針から農政・通商と副官の名に恥じない裏方シーンがいっぱい描写されています。人狼ヴァイトはRPGのボス級に強いので、一人突っ込んで大暴れしても大方なんとかなってしまうのに、そういう力任せなことはしません。搦め手で調略したり、アメと鞭の統治をしたりと渋いんです。何人かの魔王に仕えるシーンは出てきますけれど、決してヴァイトが魔王に君臨することはありません。あくまで裏方、副官のポジションを保っています。
 
光栄のゲームで内政プレイ・外交プレイをやってしまう方なら、この良さを共感してもらえませんかねぇ。
内政シーンが多いので、それを補完する前世知識もいっぱいで豆知識も楽しめます。あと良かったのが、地学や工学・農学・経済学などなど色んなリアル知識がベースになって出てくるんですが、作中のキャラが語るなど自然な形で登場してくるのでストーリーに集中して楽しめたところです。私は面倒くさい読者なので、リアル知識を元にした異世界ラノベが大好きなくせに、知識語りが多いと「あ、またウンチクがたりだ」と冷めてしまうので、人狼への転生の描写はとても自分に合っていて良かったです。
 
 
作中のキャラも一人一人に国をどこかしかで動かす役目が、ちゃんと与えられていて人狼なら戦闘シーンで、人間であれば通商や調査、技術開発など活躍の場があるのが良いですね。探知魔法に長けた人間とか人間の商人とか、全く戦闘向きじゃないキャラの方が大きな活躍の場があるのは面白いところです。美少女・美女もちょいちょい出てきます。でもハーレム展開にはなりません。攻略対象は限定されている感じで、このあたりも同時期の作品との違いかと感じます。
 
キャラのイメージに合わせてフォントを変えているのも、手がかかった表現でお気に入りです。
大判のラノベで単価もお高めなので、総じて社会人向けの作品じゃないかと思います。なにせ刊行点数が多いので最初の1-2巻を読んでみるか、原作のなろうを読んでみてください。もし良いなと感じたら11巻までは一気に買ってOKだと思います。
 
 

1-2巻目の感想 

1~2巻は、本作の世界観やキャラ紹介などシリーズの地固めにあたります。まだまだ人類相手に一進一退で、人類と魔族がバチバチやりあっています。戦闘多めです。
 

3-4巻目の感想

3~4巻は、ヴァイトが魔王軍の全面にでるようになり、人間勢力への調略が効果を上げ出します。魔族と人類が手を取り合ってが、このあたりからな気がします。この協調路線が基本政策の展開として定まった頃かなと感じます。
 
 

5-11巻目の感想 

5~11巻は、これまでの国内を越えて外部へとうって出るシーンです。大規模な集団戦の描写が出るのもこのあたりです。未読の方を考えるとあまり書けることがありませんが、11巻までが第1部です。12巻目以降はヴァイトの活躍は相変わらずながら、時代を担うキャラが中心に移っていきます。
 
 

12-14巻目の感想

12~14巻は、主人公が若い世代に移って国の発展と平行して、若者達の成長に焦点をあてたシーンが多く見られるようになっています。作品の基本的な良さは変わらずで、雰囲気は一新されています。どちらもいい絵ですが、イラストレーターが交代になった影響も大きいのでは、と思います。
 

あと14巻目から出版社がアーススターからスクエニに変わっています。出版元ベースで検索をかけるとひっかからないのでご注意ください。

 

15巻目の感想

15巻目も読みました。娘たちの代が中心になる分量がどんどん増えてきました。なんだかんだで最前線へ出てしまうヴァイトも、かなり自重するようになりました。世代交代が進みつつありますね。15巻も続く長編なので出てくるキャラも様々です。イラストレーターも手島さんに代わって新しい挿絵を徐々に楽しめるのも楽しかったです。安定した面白さです。
 
人狼への転生、魔王の副官 1 魔都の誕生 (アース・スターノベル)
漂月
アース・スター エンターテイメント
2015-12-18
 
 
 
 

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