天才最弱魔物使いは帰還したい【ラノベ感想】

2022年10月11日

天才最弱魔物使いは帰還したい 〜最強の従者と引き離されて、見知らぬ地に飛ばされました〜
著:槻影
イラスト:Re:しましま
出版:一迅社ノベルス

  天才最弱魔物使いは帰還したい

アマゾンのあらすじより

フィル・ガーデンの『魔物使いの神話』――Tamer’s Mythology。
読者を熱狂の渦に巻き込んだあの作品が、リニューアルして書籍化! 書き下ろし短編付き!

「ここはどこだ……」
気づいたら、僕は異国の往来の真ん中に立ち尽くしていた。
さっきまで使役する従者(ルビ:スレイブ)と、魔王を打ち滅ぼさんとしていたのに――。
これまでとは言葉も違う。文化が違う。気候も違う。鞄もないから金もない。武器もない。コネもないし、身分証すらない。なにより……従者(ルビ:スレイブ)とのリンクも切れてしまっている。
僕は覚悟を決めると、いつも通り笑みを作った。
「仕方ない。やり直すか」
突如レイブンシティに現れた、異国の男フィル・ガーデン。
彼は遥か彼方からやってきたSSS等級探求者。そして、伝説級の《魔物使い》で……!?

身体は脆弱、だけど能力は天才的。
その優れた弁舌と、培ってきた経験(キャリア)で、あらゆる人を誑し込む!
常識破りの英雄物語、ここに登場!!

 

感想

設定とストーリーが練りこまれていて面白かったです。
主人公のフィルは、天才で最弱です。それは魔物使いとしての経験と熱意は、生ける伝説にあと一歩なレベルで天才です。でも人間なので肉体的には、強くありません。しかも人間の中でも主人公は、魔力も劣っていると最弱です。そういうアンバランスな特性を持った主人公が、従者(スレイブ)を使役して冒険に臨む物語です。

かなり面白いです。主人公は戦闘力をもっていないため、戦闘中にできるのは支援だけです。だからバトルの様子は、戦況を分析して展開を先読みする頭脳戦になっています。戦闘中にできる支援もスレイブへの指示と限定的で、事前に準備をしてスレイブのコンディションを仕上げる。探索の不安要素を潰してから挑むと玄人受けしそうな戦い方をします。
事前の情報収集とかの仕込みが、最強と呼ばれる主人公の手腕なんだと思い知らせてくれます。知識も抜群でカッコいいですよ。

 

でも彼は完璧じゃありません。黒髪主人公+天才+最強+独善的な性格となると、私の場合、主人公への好感度がダダさがりになります。しかし本作は、しっかりと主人公のダメな側面も付け加わっていて好感を持てました。
それは魔物使いとしてのスレイブマニアな側面です。めずらしい魔物や種族がいるとデータを取ろうとしますし、ついつい「うちの子になる?」と暴走するところまであります。作中だと主人公は、あくまでデータを取るためで魔物使いの知識を共有するため……と首尾一貫していますけど、外からは節操なしにしか見えませんね。これで恋愛感情は一切ゼロとくるので、非常にたちが悪いですよ。
主人公は普通じゃないんだ…が、よく分かるところでした。

 

そんな主人公と並び立つ本作の魅力があります。それがスレイブです。冒頭で最強のスレイブと離れ離れとなっていしまった関係で、新たなスレイブと契約するのが1巻目の始まり部分です。それでスレイブになるのが、表紙のアムです。
この子は上目がちなイラストの通りで自信を失っていて、終始オドオドとした態度です。まともに狩りもこなせないぐらいの強さと結構な問題児です。でも種族は夜魔で高いポテンシャルをもっています。だから主人公が能力を発揮できるよう導いて、強くなっていく展開となっています。

スレイブを通じて成長の楽しさを楽しめるんですね。
ちなみにアムは、どこまでもご褒美を要求するわがままさ + 嘘もついたり逃げたりする + 成長してもぬぐい切れなポンコツ感と、非常に愛らしいキャラです。残念系ヒロインが好きな方の好みに合うんじゃないかと思います。

 

ラストの展開も予想をいい意味で覆してくれて、全く飽きずに最後まで楽しめました。1冊の分量が400ページと大量で読みごたえも抜群です。
ちょっと毛色が変わったファンタジーを探している方にオススメです。

 

2巻目の感想

2巻目では、主人公の相棒アリス・ナイトウォーカーとの行動が中心となります。最強のアリスも周囲の敵は、生命エネルギーを吸い取れない機械生命体だらけと、相性の良くない中での冒険を強いられることになります。それを補うために機械生命体に特攻を持つ、機械魔術師と手を組んでの冒険も楽しい展開の1つです。

またスレイブのアムにしろアリスにしろ種族が、「悪性霊体種」という設定も面白いですね。この種族は基本的に命ある存在から、距離を置かれる存在です。冒険者的には歓迎されない面倒なメンバーですね。
そして本人のメンタル面が、能力へダイレクトに反映される特性もあるんです。だから魔物使いの主人公は、本人のやる気が出るようにケアしないとならないんです。

なんですけど……「悪性霊体種」は、どうも種族的にメンヘラ気質傾向があるように見受けられます。1巻目で即分かるようにアムは、たいそう面倒くさい性格です。それに加えて一見するとツンクールっぽいアリスも、たいがいに病んでいます。しかも彼女の方が重症だったりします。
ですので愛が重めのヒロインを好きな方の好みにも、合うんじゃないかと思います。

 

とても読み応えのある2巻目でした。ラストの様子だと……ママみあふれたスレイブのアシュリー・ブラウニーは出てくるのかなぁ。先が気になります。



 

同レーベルの感想も読んでみる

 

一迅社ノベルスの感想