長い夜の国と最後の舞踏会【ラノベ感想】

2022年7月24日

長い夜の国と最後の舞踏会  ひとりぼっちの公爵令嬢と真夜中の精霊
著:桜瀬 彩香
イラスト: 鈴ノ助
出版:オーバーラップノベルスf
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アマゾンのあらすじより

深い森に閉ざされた国ファーシタル。
その森を管理する精霊に仕えてきた公爵家の令嬢ディアは、幼い頃に家族を殺され、王家に保護されたのち第一王子リカルドと婚約する。
しかし、彼が他に愛する女性を得たことで婚約は解消される。
円満な婚約解消に思えたが、ディアは知っていた。
かねてより精霊との繋がりを危惧していた王家がこの婚約解消を機に、数日後の舞踏会で自身を手にかけることを。
そして自分の家族を殺したのが王家だということも――。
全てを失いひとりぼっちで生きてきたディアは、最後に奪い続けてきた者達への復讐を決意する。
そんな彼女をずっと見ていたのは、美しく残忍な精霊ノイン。
彼こそディアの一族が仕えてきた精霊で、ディアが殺される理由だった。
気まぐれに現れるノインとともに、残されたわずかな日々を過ごすディアは、最後の舞踏会に向けて歩み始める――。

感想

著者さんがTOブックスから出されている『薬の魔物の解雇理由』は素晴らしすぎました。続けての作者買いです。内容が濃くて1行ごとにゆっくり噛みしめて読む作風で私が、大好きな作風でした。満足感すごいです。
薬の魔物だとコメディ的な軽いシーンが多かったり、1巻目では恋愛描写がそこまで濃くないので男性へもオススメしたくなる作品です。それに対して本作は恋愛とか令嬢要素が強い気がします。カバーイラストとレーベルからしても女性読者向けですね。

 

まず私が本作を好きなポイントは、描写・内面/外面の説明がとにかく丁寧なんです。魔術とどういうものなのか。舞台となるファーシタルの成り立ちはどうなのか。そこに暮らす人はどう生きていくのか。こういった様々なことがお話の中で分かっていくんです。文化・歴史・風俗が緻密に描かれていてファーシタルが、実在した国かのように感じさせられます。作品舞台への没入感はとんでもないです。

 

あとお話の構成的にもかなり凝っています。過去の話と現代の話を交互に繰り広げていく展開をします。婚約破棄からスタートして、主人公ディアが命を失う日をめがけて時間が流れる1巻目です。あえて主語を抜かしたシーンとか、ミスリードしがちなシーンを入れ込んでくれてます。それが良い演出になって徐々に「読者目線でのどうして?」がクリアになっていくんです。
どうしてリカルドはディアと契約してくれたのか。どうしてディアは命を失うのに逃げないのか。読者に何故?を考えさせて、種明かしとなるキーワードをだして、その後に答えを教えてくれる仕掛けです。読んでいて全く飽きませんでした。

 

そういった仕掛けが随所にちりばめられています。そのため1行の中身を忘れているとその後の展開で、スッキリしないことが起きかねません。1文1文をかみしめるように読んで、情景を浮かべながら読むのが面白いんじゃないかと思います。いっぱい読みたいから早く読みたい人には、ちょっと大変かも。
繰り返して読むと最初には見えなかった発見をできる作品のような気がします。そう考えると好きな作品を何度も繰り返して楽しむ方に向いているんじゃないかと思います。

 

2巻目の感想 

待望の2巻目を読みました。ついにディアが願っていた復讐がなされた巻です。復讐に至るまでの過程を1巻+αの分量でつづってきてついにです!
なんというか復讐は空しいというかディアの復讐が、実行され彼女を害していた人々は報いを受けました。そして彼がなぜディアに対してそうしてしまったかの理由も分かるようになります。

立場が違うから。見えているもの、見えている先にあるものが違うから。結果が最善の手段だなんて全く思っていないにもかかわらず進んでいってしまうのでしょうね。2巻目を読んでこういったことに気づきましたよ。
ディアの復讐という破滅に向かい登場人物達が、止めることができず突き進んでしまう悲しいお話です。ゆっくりと破滅に近づいていってしまう愚かさやもどかしさの描写は、見事としか言い様がありません。

そして破滅後についても2巻では語られていてディアは、ノインが住む世界に本格的に入っていきます。本来人間は強い力を持った妖精とともに生きられないんです。そこでノインと共に過ごしてきたことでディアの体質がかわっていきノインの世界に入れるようになるんですよ。復讐が済んでここから本格的にディアとノインの恋愛模様が動くのか楽しみです。
ノインがところどころで見せるヤキモチの場面もたまりませんね。斜め上の反応が多いディアは、いつ気づくのやらです。そして復讐直前からの変化としてディアの感情・表情が豊かになっているというのもあります。これまで悲劇の主人公であったのが、幸せな話しの主人公になったのかな?と報われてほしい気持ちで読んでいきました。

 

これ以外だとリカルド王子のその後のお話も切なくて素敵でした。ティワという2巻で登場したキャラとの交流は、是非読んでみて欲しいです。もちろん今回もまたイラストが秀逸です。カバーが美しい! カバーイラストは、色使いやドレスの書き込みなどは、作中のシーンが来てから見返すと色々気づくことがありますよ。
設定集には、ついにムクモゴリスのイラストもあります。ディアがどうしてあそこまでムクモゴリスに拘るか納得の愛らしさです。マスコットグッズがあって良いぐらい可愛かったです。

 

面白くて読み応えばっちの作品でとても良かったです。恋愛要素がOKであればすごくオススメしたい恋愛ファンタジーです。腰を据えてしっかり読むタイプの作品なので、ある程度読者層は選びそうです。『薬の魔物の解雇理由』を先に読んでみて世界観にひたれるようなら、こちらも読んでみるのが良いと思います。

 
 
 

 

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