啼かないカナリアの物語【ラノベ感想】

2022年12月18日

啼かないカナリアの物語 声を出せない魔法使いと模造の小鳥の探しもの
著:綾村 実草
イラスト:推奨 幻想
出版:ドラゴンノベルス

啼かないカナリアの物語

アマゾンのあらすじより

相棒がいるから、私は強い。世界を旅する一人と一羽のファンタジー

魔法使いのカナリアは声を出せない。筆談に使う、心の声が浮かびあがる魔道具の石板を首に下げ、片脚の模造鳥(ゴーレム)、シャハボを相棒に今日も果てない旅路を行く。魔力は強力でも食のセンスは壊滅的なカナリアと、頼りになるがおしゃべりすぎるシャハボの間を結ぶのは信頼を超えた固い絆――そんなカナリアたちは、その実力を買われ、いきなり領主のお嬢様警護という厄介な依頼を持ちかけられるのだが……!? すべては相棒・シャハボとともに――“探しもの”を見つけるために、世界を旅する一人と一羽の絆を描く感動ファンタジー。

感想

主人公カナリアとゴーレムのシャハボが、見せてくれる唯一の相棒って絆の深さは印象的でした。帯に書かれていた「話せない魔法使い」と「おしゃべりな相棒」のコントラストが映えますね。相棒のシャハボときたらおしゃべりで余計な一言もおおいのにカナリアと会話するときは、それが自然な感じでお互いに分かり合えているようにしか見えないんです。
家族同然の相棒と旅をするバディものって良さでとても面白かったです。

中でもカナリアとシャハボが、2人だけの時にだけ呼び合う特別な名前を持っているっては、特別感を際立たせてくれて特にお気に入りの演出です。
まぁこのお互いの思いの深さがゆえに数々のトラブルが、引き起こされていくわけでもありますが。

 

さて表紙でポーズをとる金髪少女がカナリアです。そして胸元にあるのは石板です。彼女は生まれつき声を出せないので思ったことが、文字となる石板の魔道具を身に着けているんです。そして緑の小鳥の方は、相棒のシャハボです。こちらは貴重なゴーレムです。
おしゃべりなシャハボの会話と静かに文字だけを浮かび上がらせるカナリアの会話は、素敵な演出でしたね。対照的な2人で情景を思い描くと、なんともいえず良いなぁという気持ちになりました。

 

そして2人が旅をする目的は人探しです。その過程で色んなトラブルに巻き込まれていくファンタジー作品となっています。
最初私はタイトル・表紙イラスト・あらすじからロードムービーみたいなハートフルさのある作品かなと想像していました。そうしたらそれとは違う方向で面白い作品でした。言うなれば優しくない世界を旅する絆の物語です。

なんと主人公のカナリアは、こんな可愛い姿で世界でも最強クラスの冒険者だったりします。その強さときたら完全に規格外です。でもって一流の冒険者ですから命のやり取りに慣れています。ということなので顔色かえずに敵の命を奪ってきます。
その上シャハボに手を出そうとする相手には、子供を護る母熊みたいに全くの容赦がありません。作中でのシャハボに手を出したら許さないのシーンは、まるでしゃべれないカナリアが本当に声を上げているかのような迫力でした。
この外見とのギャップは驚かされました。

 

この作品って私が好きなタイプのストーリーなんです。精神的にも能力的にも強い女性が、主人公で道を切り開いていく展開です。
また魔法に関しても感知系などの補助魔法を駆使してテクニカルなんですよ。この作品ならではの魔法体系でもありそうな様子です。そのせいか懐かしさを覚えるファンタジーラノベだなって印象も受けました。令和のこの時代にこういう作風を読めるのは、うれしい限りです。

 

こうなってくると気になるのは、カナリアって一体何者?というところです。でも1巻目ではこのへんはほとんど明かされていません。あとがきによると第1章の前半にあたる部分が、1巻目で2巻目でその後半だそうです。
MFブックスみたいに1巻2巻同時刊行ってしてほしかったですねぇ。これは続きだしてくれないと酷ですよ。ぜひ続刊を。

 

 

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