ブレイド&バスタード 【ラノベ感想】

2024年1月6日

ブレイド&バスタード -灰は暖かく、迷宮は仄暗い-
著:蝸牛くも
イラスト:so-bin
出版:DREノベルス

  ブレイド&バスタード

アマゾンのあらすじより

――冒険の果てに、いつか魂さえ失うと(ロスト)したら?
「その時は、次の冒険者が上手くやるさ」

誰も足を踏み入れたことのない《迷宮(ダンジョン)》の奥で発見された、あるはずのない冒険者の死体――蘇生されたものの記憶を失った男イアルマスは、単独(ソロ)で《迷宮》に潜っては冒険者の死体を回収する日々を送っていた。《蘇生》が成功しようが失敗して灰となろうが、頓着せず対価を求める姿を蔑みつつも一目置く冒険者たち。そんな彼の灰塗れの日常は、壊滅した徒党(パーティ)の唯一の生き残り「残飯(ガーベイジ)」と呼ばれる少女剣士との出会いを機に動き始める! 蝸牛くも×so-binが贈るダークファンタジー登場!!

感想

ゴブリンスレイヤーの蝸牛くもさんとオーバーロードのso-binさんがタッグを組んだ新作です。表紙からただようダークファンタジー感のとおりでとても面白かったです。

ダンジョンに潜っていたある時、風変わりな少女と出会ってから始まる日々……のお話となっています。ダンジョンの恐ろしさ、死と隣り合わせの冒険というのをこれでもかと見せてくれます。蘇生があったとしても失敗して灰となるリスクもある世界観です。これぞダークファンタジーという雰囲気です。

世界観の魅力はもちろんとしてキャラも素敵なんですよね。主人公のイアルマスは、剣と魔法に通じた凄腕の冒険者です。ただ過去の記憶を失っていて彼は何者なのか。なぜそれだけの強さを持っているのかは、謎のままなんですよ。
そんな彼が孤独にダンジョンへ挑み立ち回る様子は、古強者らしさたっぷりでかっこいいです。

そして主人公と行動を共にすることになるガーベイジです。
彼女は元奴隷の少女です。でも人間の言葉を話せずに獣のようにうなるだけ。そして戦闘になると突撃してしまう狂戦士と尖りまくったキャラクターになっています。
またしゃべらなくともガーベイジは、イアルマスに親しみを感じているのも分かるんですよね。無口なバディものみたいな良さもあったりします。

 

個性的なファンタジーということで世界観をつかむまで読んでいて大変に感じることが、あるかもしれません。それも中盤に盗賊くんが加わるまでですよ。彼は一般人視点でイアルマスとガーベイジの異常さを説明してくれます。そういった読みやすさへの配慮もあって、ベテラン作家さんらしい凝っているのに読みやすい作品です。

『灰と幻想のグリムガル』みたいな甘さのないファンタジーが、好きな方ならきっと好みに合うと思います。オススメです。

 

さてここから余談です。

本作の独特な世界観は、ウィザードリィというコンピューターゲームを背景にしています。世界中でそれはもう売れまくった作品です。その公式ライセンスを得て書かれた作品にもなっています。

私はウィザードリィの1~6ぐらいを知っていたのでブっ刺さりまくりました。「ミルワだ懐かしい!」とか「これ馬小屋での魔法回数回復だ」とか原作要素の数々は楽しい限りでした。これきっと蝸牛くもさんノリノリで書いていそうだなぁって想像するような力のいれ具合です。完全に対象読者層は、30overの男性層ですね。

だってHPを集中力と表現するのは、かなりの古参ゲーマーだと思うんですよね。
たしかこれってレベルアップしたぐらいでこれまで一撃死だったダメージを何度も耐えられるって生物としてちょっとおかしくないか? に対し、これはダンジョンで経験を積みそれまでは即死だったダメージを軽傷でおさまるように立ち回っているんだという解釈だった記憶です。JICC出版の何かでそんなのも読んだ覚えがあります。

 

2巻目の感想

ダンジョン攻略の仲間が増えました。それがよりにもよって、魔術師なのに恵まれた体格を生かした、前衛枠の殴りメイジですか。体格がいいならメイジでも殴れってのは、ゲームじゃなくて物語らしくい面白さですね。
しかもそのメイジが、女性キャラなのもまた嬉しいところです。

人語をしゃべれない狂犬少女のガーベイジ & 駆けだしメイジの巨女ベルカナン。なんとも本作のヒロインたちときたら、個性的なこと。 
ララジャといいベルカナンといい新米が成長して強くなっていくのは、こういう冒険ファンタジーの醍醐味といえますね。

 

そしてPTも気づいてみたら「ソロ系メイジ」「バーサーカー」「シーフ」「殴りメイジ」と、バランス無視の前のめり編成になってました。プリーストはスポット参戦で、基本の回復はポーション頼み……。色んな意味で危ういパーティーです。

 

こんなバランスで次巻のダイヤモンドの騎士は、大丈夫なのかなぁ。あぁ次が気になります。

 

3巻目の感想

表紙と帯を見た時点でテンションが上がります。
銀に輝く大剣を持って、仁王立ちするガーベイジ。そして帯にある「伝説の帰還」。
読んだらもっとテンション上がりますよ。

 

なんとこの銀の大剣は、ハースニールです。

KOD’s(Knight Of Diamonds)アイテムです。3巻目はダイヤモンドの騎士のお話ですよ。
そしてハースニールを手にしているのが、あのガーベイジなんです。

言葉を話せなくてガーベイジにも大きな秘密がありそうだなって、感じていた伏線が回収されました。これから彼女を巡っての陰謀が増えていくんですかね。どうなるか楽しみです。

ガーベイジは言葉をしゃべれなくてもオーラがあって、イアルマスよりも主人公っぽい振る舞いな気がします。3巻目のハースニールを手にグレーターデーモンに立ち向かう姿はとてもカッコよかったですね。

 

あとは今回も盗賊のララジャ視点の方は、低レベル冒険者の奮闘って雰囲気でしたが、ゲームだとやりこみ要素としてやるソロダンジョンアタックを、あんな風にストーリーに落とし込んでくるとは思いませんでした。
経験を生かして立ち回りも上手になって、新人ズの成長も楽しかったです。もうすっかり彼らも冒険者です。

イアルマスやガーベイジは、どうしても規格外な背景や強さを持っているので、ライトノベル的な冒険とか成長というとララジャとベルカナンのシーンもまた楽しみです。

 

あとこの巻から登場するビショップのオルレアも忘れられません。そこまで彼女の人生、過酷でなきゃならなかったんですかねぇ。気の毒で可哀想過ぎました。
彼女にはこれから幸せになってほしいです。4巻目に期待です。

「魔術師ワードナ」「狂王トレボー」「伝説の鎧」「ル’ケブレス」これらの単語が分かる古参ゲーマーにも読んでみていただきたい作品です。かなりウィザードリィ成分は強いです。かつてのwiz小説を今風のラノベにした感じです。とても面白いですよ。

 

 

 

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