恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。【ラノベ感想】

2024年9月29日

恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。-妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったらー
著:永野水貴
イラスト:とよた瑣織
出版:TOブックス

  恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った

アマゾンのあらすじより

妹の代わりに、毒に満ちた異界の番人となった元令嬢・ウィステリア。ある日、空から初恋の人に瓜二つの男が現れる。名はロイド。なんと彼女の初恋の人の息子だった! 王女へ求婚の証に、ウィステリアの相棒・言葉を解する聖剣【サルティス】を求めて来たという。止まった時の中で生き延びてきた彼女は、独自の魔法でロイドを倒し、元の世界に帰れと諭すがーー「あなたを倒すため、弟子にしていただく! 」と、説得も虚しく居座られることに。見る間に魔法を習得する弟子に翻弄されつつ、一方的に始まった師弟関係。果たして止まったままの彼女の時間は再び動き出すのかーー? 孤独な非戦闘系元令嬢×天才肌の傲慢系貴公子の師弟恋愛ファンタジー!

 

感想

このラノ2022の紹介記事で気になって読みました。思いっきりファンタジー小説をしていてとても面白かったです。

 

あらすじとタイトルで『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。』ですからね。だからわが身を犠牲として耐えた後にさぁどう結ばれるのかと思っていたら……恋した人はそのまま主人公の妹と結ばれてハッピーエンドとなってしまうんですよ。予想外の展開に私は、おもわず「えっ!?」のリアクションでした。

そのあとに恋した人の息子と出会い弟子に迎えるとか……。しかも出会いが最悪で好感度のない状態から恋愛をスタートさせていくとか……。なんて心を揺さぶってくるシチュなんでしょう。とてもそそられる展開です。

だって主人公のウィステリアからしてみたら初恋の人にそっくりな若者。そしてその人は、初恋の人と妹の息子なんですよ。
主人公の心情を想像したら……想像が止まらなくなってしまいそうです。

しかも妹の息子といっても主人公の外見年齢は、若いまんまなので弟子のロイドから見たら美しい魔女です。そして実力の違いを知らされて子弟として同居していれば、恋も芽生えるに決まっていますよね。
お姉さまと少年の構図ですよ。こんなん期待が高まるしかありませんよ。とっても面白いです。

 

そんな恋愛面以外にも魔法があって、番人の役目があってとか魔法ファンタジーとしての世界観が、丁寧に描写されているのも魅力的なところです。ファンタジー設定の濃さを感じます。同レーベルから出ている『薬の魔物の解雇理由』を好きな方には、こちらもお勧めしたい世界感ですね。

 

加えてなんと本作には、しゃべる剣も登場します。インテリジェンスソードです。これまたファンタジー好きには、嬉しいギミックですね。
そのしゃべる聖剣の性格は、1巻目をみたところお調子者な感じです。これだと恋愛にブレーキをかけそうな主人公の背中を剣が、押してくれるのか? それとも引っ掻き回してくるのかな?と続きが楽しみになります。

 

2巻目の感想

お互いに意識しまくりなウィステリアとロイドです。で微妙な空気になるとサルティスが、空気を戻してくれてバランス良い2人と1本ですね。

 

まずウィステリアは、40歳越えではありながら20年近く異界で一人ぐらしです。だから恋愛レベルがお子ちゃまなまんまです。ロイドの風呂上がり姿を見て赤面するぐらいピュアです。年上で魔法の達人でいて、これなんですからギャップにグッときてしまいますよ。

対してロイドの方は、相応の恋愛レベルもちです。しかしこれまで国にいたときは、人と距離感をおいた接し方をしていてウィステリアに対する態度は、一線を画しています。人への執着心でも芽生えたのでしょうか?
見ていてこそばゆくなる感覚で楽しいです。

 

あと本作で感じてしまうのが、残酷な運命ってところです。

ウィステリアにとってのロイドとの出会いって、それまで孤独であった異界での生活を一変させるんですよね。でもロイドは国に婚約者がいていつかは、帰らないといけない身です。しかも甥っ子ですし。
失ったあとのことを想像したら酷な状況ですよ。

それに加えてロイドは甥っ子です。それゆえにロイドの顔もロイドの声もブライトにそっくりなんです。彼の姿を見ると嫌でもブライトを思い出させてしまうとか……なんとも運命とは残酷だと思います。

 

また2巻目には長めの書下ろしがついています。ここでロイドは、人と距離をおいた付き合い方をしていることや彼の悩みなんかが明かされています。それを読むと本編でロイドが、見せてくれたウィステリアへの必至な様子に妄想が膨らんでしまいます。
閉ざされた異界ってファンタジーな世界と恋愛が、がっつり絡まって大変に面白かったです。

 

3巻目の感想

異界でウィステリアをつけ狙う魔物の脅威や、大竜樹の瘴気に群がる魔物をどう退けるか冒険要素が強まってきました。
そしてウィスとロイドのイチャイチャも一層楽しくなってきました。

この作品って基本的にウィステリア視点でお話は、進んでいって《ロイド視点》みたいにその時ロイドがどう感じていたかを直接的に書いていません。表情とか声色がどうなったとかリアクションを知るぐらいです。
その代わり回想シーンなんかでロイドやウィステリアの内面を掘り下げて教えてくれる形式です。この繰り返し挟まれる回想によって、今までのロイドだったらこんな行動しないよね。どうみても意識しているよねってのを読者に教えてくれるんです。

だからロイドから「あなたのことだから聞いた。」ってウィステリアへ問うシーンは、思わず「おぉきたぁぁ」とテンション急上昇ですよ。
ウィステリアの意識しまくりな行動が、どうみてもバレバレなだけにロイドのさりげない行動に目がいってしまいます。

 

またこんなふうに2人の距離が、縮まってくるともう一つの心配事も気になってきました。それは何かというとロイドは、当初の目的通り聖剣を持ち帰るかです。
ロイドの訪問で20年ぶりに孤独からウィステリアは、解放されていました。その反面に孤独の辛さを再認識させられてしまった一面もあります。
しかも帰還と一緒に聖剣まで持ち帰られては、話し相手だったサルティスまでも失うことになります。そうなれば完全な孤独です。

 

4巻目の感想

ついにきました! ウィステリアの正直な気持ちが、露わになりました。ようやく自分に言い訳して、理性で抑え込んでいた仮面が剥がれましたよ。

 

たとえ二度と魔法を使えなくなってもロイドを助けたい。

たとえ二度と剣を振れなくなってもウィステリアを助けたい。

 

ついにお互いの思いが一つになりました。

歯がゆさをタップリ味わってからのデレは、強烈に効いてきます、私に。これを待っていたんですよ。徐々にお互いの思いが重くなって、深まっていくコレですよ。
どんな風に思いが通じ合ったかは、4巻目をよんで確かめてみてください。

 

さて相手のことを好きだと明確に意識するようになりました。
それでも正直にはなり切れない2人で、恋の行方が非常に気になります。たしかにロイドには王女がいますし、ロイドとウィステリアは、甥と叔母の親戚ですからね。

4巻目のラストから次はどんなお話になっていくのか楽しみです。

 

5巻目の感想

ついに急展開きました。

これまで暗く閉ざされ2人と剣1本だけの世界だったのが、いっきに開けて明るい舞台なりましたね。

環境が一変し喜ばしい面が多々ある一方、瘴気に長くさらされ異界に順応してしまったウィステリアは、はたして人間といえるのか?の厳しい現実が突きつけられます。瘴気にさらされても支障がなく、20数年前と遜色ない若さを保つのは人間止めているといわれるのも……。
後ろ向きな思考が強いウィステリアの自問と悩みが、グッサグサと突き刺してきました。

異界で刻を止めたまま生きて、老いることはなくなった。若さは保たれている。でも愛する人の子を得るのはできるのか……
そしてブライトはウィステリアに対しどう思っているのか……。

直接言葉にして聞けないからやってくる焦りや焦燥感に見入ってしまいました。

読者目線でみたらロイドは、どうみたってウィステリアを愛していますよね。決定的な一言こそありませんが、以下のようなセリフをウィステリアに届けてますからね。

 

「私が、あなたをこの世界に連れ戻したかった。必ず連れ戻すと決めていた」
「決してあなたを置いていかないと言った」
「あなたの中から、その男を消してくれ」

これらのセリフがあって5巻ラストのシチュとロイドからあのセリフです。

どうみたってロイドはウィステリアにベタ惚れですよね。サルティスですら気づいているというのに気づけない、ウィステリアの残念恋愛力です。そうそろそろ気づいてもいいですよ? そしてブライトへの未練をどう断ち切るか読んでみたいです。

 

例によって今回もまたかなりいいところで終了しています。ウィステリアはロイドからのアレに何て応えるのかな?

 

6巻目の感想

5巻目からウィステリアとロイドと剣だけの世界だったのが開かれて、6巻目では登場人物が増えてだいぶ賑やかになりました。

ずっと師匠としての姿か過去のウィステリアの姿をみていたところだったので新鮮ですね。同世代の女性と接するウィステリアは感覚がズレていて、まるで箱入り令嬢みたいでした。まあ本当に令嬢なわけなんですけど。

改めて感じるのはウィステリアって自己評価低いですね。こんなに美しいと褒められていても実感がないんです。
これは妹みたいな愛らしい系の雰囲気にコンプレックスでもあるんでしょうかね?

ある意味、ロイドへの感情は深まってきてもウィステリアはあいかわらずでした。

 

それに対してロイドはどんどんと愛が重くなっていて素晴らしい。大変に好みの展開です。
「……私以外の誰の目にも触れないならどこでもいい」ですってよ!
こんなのロイドの目が届かないとこへウィステリアを行かせないって宣言と同じですよ。

いやーあの自信満々だった貴公子がこうも変わるとは思いませんでした。

 

ウィステリアもいい加減自分の気持ちに正直になればいいのに。素直に幸せを追い求めればいいのになあ。

そのくせロイドの思いに鈍感で無防備にも弟子取りをしそうとするし。
男性の弟子なんかとったらロイドはヤンデレ化しかませんよ。ウィステリアのために全ても投げ捨ててもいいって覚悟を見せてくれているのに……

 

またまた続きが気になるラストでした。

 

世界観に浸れる恋愛ファンタジーで非常に続きが楽しみです。オススメします。

 



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