オイレンシュピーゲル【ラノベ感想】

2023年1月10日

オイレンシュピーゲル
著:冲方丁
イラスト:白亜右月
出版:角川スニーカー文庫

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アマゾンのあらすじより

「なんか世界とか救いてぇ―」。あらゆるテロや犯罪が多発し『ロケットの街』とまで渾名される国際都市ミリオポリスに、「黒犬」「紅犬」「白犬」と呼ばれる3人の少女がいた。彼女たちはこの街の治安を守るケルベルス遊撃小隊。飼い主たる警察組織MPBからの無線通信「全頭出撃!」を合図に、最強武器を呼び込み機械の手足を自由自在に操り、獲物たる凶悪犯罪者に襲いかかる!クールでキュートでグロテスクな“死に至る悪ふざけ”開幕。

感想

濃厚なミリタリーSFを堪能してしまいました。
物語の舞台は、ちょっと未来の地球。時は2016年のウィーン。
現代の地球より人造兵器が発達して、テロが華やかでちょっとばかり物騒な世界です。
 
主人公は3人の少女「涼月、陽炎、夕霧」です。彼女たちは生まれながらや事故で体に障害を持って生きるのが困難なので、国によって機械の体を与えらられた少女達です。そして生き延びたかわりに警察で機械化児童として働いています。子どもが大人に交じって、対テロの最前線で壮大なアクションを繰り広げます。
 
アクションシーンはSFそのものです。機械義肢が装甲を吹き飛ばし、接続された軍用機体が闊歩します。ハヤカワのSF?と遜色ない描写です。しかしSF描写どっぷりでなく、魅力的でじゃじゃ馬な少女達が動き回るので、ラノベ的なキャラの魅力も豊富です。そのため内容のハードさに比較すると読みやすいです。もっというと難しくても理解したくなる、調べて読み込みたくなる面白さをもっと作品です。
 
そしてタイトルのオイレンシュピーゲルからして元ネタありなくらいなだけに、多方面のネタが詰め込まれています。また現代の地球のちょっと未来が舞台なので、現代史にからんだネタだらけです。政治・経済・宗教・人種などがこれでもかと出てきます。あきらかに刊行時の高校生では、難しかったのではないでしょうか。本作をきっかけに現代史を調べるのもアリ?
 
 
本作は機械義肢の少女というフィクションさと、舞台設定となる現代史の各事件を元にしたノンフィクションっぽさがかみあって、とてもリアルな世界観を感じさせてくれます。キャラの出身国が変われば、言葉が通じない。そんなリアルでの当たり前が、作品内でも描かれています。ウィーンに暮らす主人公達はドイツ語を話しますし、ロシヤ人はロシヤ語を話します。しかも、主人公が話すドイツ語はウィーンに合わせて、オーストリアで話されるドイツ語だったりします。作者のこだわりが嬉しいです。
 
そんなオイレンシュピーゲルは、全4巻構成です。1巻~3巻は各キャラや世界を掘り下げる紹介が順序立てられていて、ある意味順当な楽しさです。これはラスト4巻への布石かなと思ってます。4巻はページが大増量され、3巻目までとは比較にならない強敵、困難が怒濤のように押し寄せます。ずーとっクライマックスです。延々とハラハラドキドキを楽しめました。面白かったです!
 
総じて難しいネタが多かったり、ミリタリーっぽさのある独特の文体であったり、近代火気の暴力でバンバン犠牲者が出たりして、読者をどうしても選んでしまいます。その反面ささる人にはどこまでもハマれる作品だろうと思います。続編となるシリーズも出ていますので、SF好きだったり興味があるなら読んでみて欲しい作品です。
オイレンシュピーゲル 文庫 全4巻完結セット (角川スニーカー文庫)
冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)
2008-05-01
 
 
 

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