カラフ撤退戦【ラノベ感想】
カラフ撤退戦
著:黒色 粉末
イラスト:しおん
出版:星海社FICTIONS

アマゾンのあらすじより
『ブルー・ゴブレットは貴方をサポートします。第44観測世界の人類種存続の為に』
ゲーマーのシノダ・ユウセイは没入型端末の中で、女神のような容姿のナビゲーター〈ブルー・ゴブレット〉と出会う。
ゴブレットによって導かれた世界(ゲーム)は惑星シタルスキア。人類は惑星外起源種ウィードランからの侵攻を受け、カラフ大陸からの撤退戦を強いられていた。
ユウセイはアバターの強化兵イオ・200に没入(ダイヴ)。少年兵部隊である3552小隊とその指揮官クルーク・マッギャバン(金のお姫様)をカラフ大陸から脱出させるため、イオはウィードランとの戦争に明け暮れる。ユウセイは次第に、あまりにスリリングなこの世界(ゲーム)の虜(とりこ)になっていく……。
極限の臨場感(リアル)。鉄と血塗(まみ)れの撤退戦、没入開始(ゲーム・スタート)。
『〈常に、最新の貴方が、最も強い〉』
イオの驚異的な奮戦により、シタルスキア連合カラフ方面軍は記録的勝利を得た。だがそれは戦局を覆す物では無い。惑星外起源種ウィードランからの猛攻を受け、カラフ大陸は失陥寸前にまで追い込まれた。
時に瓦礫に、時に泥に、時に戦友たちの死体の中に紛れ、音も影も無く死角に入り込み、苦しみに喘ぎながら、血走った目で、呼吸すら殺して命を奪う。
これまで誰も彼もが命を捧げた様に、彼等もそうした。それだけだった。
戦いは人間の感覚を狂わせる。死の危険に幾度となく立ち向かう者たちの1日は、24時間ではない。もっとずっと濃密で、その中で生まれた物は、きっと強固だ。たとえほんの僅かな時間だったとしてもーー
極限の臨場感(リアル)。鉄と血塗れの撤退戦、没入完了(ゲーム・エンド)。
感想
上下巻ぶっとして撤退戦です。
基本的に勝ち目のない戦況です。そんななか人類が少しでも有利となるべく、絶望的な戦闘に身を投じ続けるガチミリものです。
近未来ものをプレイしたことがあるFPSゲーマーなら、ニヤリとくるシーンが多いんじゃないかと思います。ミリタリーが好きなかたへは特にオススメします。
ヴィードラン、いわゆるリーザードマンが重火器で武装し侵略にやってきた世界です。そして人類は敗走を重ねてカラフ大陸を失陥寸前まで追い込まれ、絶望的な撤退戦をつづけるお話しです。お話しの7割は戦闘かその準備シーンとなっていて、おもしろく1日で上下ともよんでしまいました。
ヴィードランに戦略として圧倒されていても、人類にだって戦術的に勝利できる程度の技術差なのがポイントなのかなと感じました。敵が持ち出してくる戦車は強力なんですよ。武装もしっかりしています。
ただ人類が装備するライフルやハンドガンでもヴィードランは倒せてしまいます。決して勝てない相手ではないんです。
それこそ民兵がバラまいた弾でも当たりどころ次第では倒せてしまうんです。
このバランスがたまりませんでした。基本的に不利だし勝てない。
でも奇襲したり分断すれば勝てる余地があるバランスで、死にゲー難易度のFPSと同じなんですよね
そこが高難易度ゲームのストーリーを体験しているかのような展開に繋がり、ゲーマーの主人公視点と融合して没入感を味わえました。
そう、この作品の序盤はフルダイブ型の体感ゲーム展開なんです。
主人公もリアルすぎると戸惑いながらも、ゲームと認識しているからヴィードランの排除に抵抗感を覚えませんし、戦友もリアルなNPCと認識しています。だから「チュートリアル」とか「定番のミッション」とか主人公はメタすぎる発言をしているほどです。
捨て石にされた孤児部隊と合流した当初は、ベストエンド攻略へ向けた行動を主人公はしているのかな?と、私はみていて感じました。
しかしながらゲームの世界があまりにもリアルすぎる弊害で、プレイすればするほどゲームと現実の境目が曖昧になっていくんですよ。
リアルすぎる仮想現実は本当に仮想世界なのか?
そんなSFで定番の問いを投げつけてくれる展開でワクワクする楽しさでした。
触覚や嗅覚・味覚まで現実と変わらない仮想世界は、現実と何が違うのでしょうね。またリアルすぎる仮想世界のNPCはただの電子データなのか、それとも生きている人間と変わらないのか? 深いテーマです。
NPCではなくリアルな個の存在と認識するようになった主人公は、次第にゲーマーから歴戦の軍人へと思考が切り替わっていきます。そしかいつしか本当の英雄のように超人的な活躍で人類を救うんです。その英雄的な行動はとてもゲームや映画の主人公のように熱い展開でした。
ちょっとだけネタバレすると「撤退戦」とタイトルにあるとおり、大局的には勝ちようがありません。小さな勝利を積み重ねても最後はスリ潰されて消滅します。爽快感はありません。あと登場人物の入れ替わりも早いです。
ですので末期戦や滅びの美学なんかにロマンを感じる方向けじゃないかと思います。敵を蹴散らす爽快感を求める方だとちょっと好みが分かれそうな気がします。
他にはヴィードランの兵器や部隊運用は、人類とは異なる制度や技術となっています。異文化らしさも緻密に描かれていて、ミリタリーSFを愛する方へオススメの1作です。なんとも悲劇的な撤退戦でした。
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