オリンポスの郵便ポスト【ラノベ感想】
アマゾンのあらすじより
火星へ人類が本格的な入植を始めてから二百年。この星でいつからか言い伝えられている、ある都市伝説があった。オリンポスの郵便ポスト。太陽系最大の火山、オリンポス山の天辺にあるというその郵便ポストに投函された手紙は、神様がどこへでも、誰にでも届けてくれるという。――そう、たとえ天国へでも。度重なる災害と内戦によって都市が寸断され、赤土に覆われたこの星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスは、機械の身体を持つ改造人類・クロをオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される。火星で最も天国に近い場所と呼ばれるその地を目指し、8,635kmに及ぶ二人の長い旅路が始まる――。
感想
数ページで感じました。私が読みたかったタイプのSFです。読んでいる最中も読み終えた後も最高でした。
ジャンルは電撃文庫でも珍しい純SFです。旅に重きがおかれていて、ピンチになる曲面とか戦闘になる場面も結構あります。それでも少女が主人公ということもあってか、柔らかく優しい印象が強い作品です。サイバーパンクみたいな殺伐感や大量の独自用語はでてこないので、ふだんSFを読まない方にもオススメできます。
隕石災害と内戦で荒廃した火星が舞台です。主人公のエリスは壊れたインフラに変わって、火星のあちこちまで郵便を届けるポストマンです。そしてエリスは両親と生き別れており、火星中に郵便を届けながら両親の足取りを探す日々を過ごしています。そんな彼女が改造人類のクロをオリンポスの郵便ポストまで届ける109日間の旅の記録が本作です。
クロは火星開拓時代からの生き残りで、痛めた体を機械化していくうちに全身が機会となった改造人間≪レイバー≫です。エリスとクロの旅は年長のクロが、エリスをリードしながら旅をするバディものに通じる良さがあります。長い旅の中でお互いの過去を語り合うようなページの演出になっているところも良い雰囲気です。2人が支えあって困難な旅に立ち向かう様子は美しいですね。それから火星が荒廃してしまった理由や、エリスやクロの過去など科学っぽい理由付けとか、サイバー感があるガジェットが出てきたりと、SF好きが喜ぶ内容もバッチリです。星雲賞の参考候補にもノミネートしてます。
1巻目がとても美しい終わりをむかえて、テーマもSFなので単巻かと思いきや続刊もでています。2巻目は1巻目の直後から再開です。そして旅のパートナーは《レイバー》のクロから、地球の全権大使を名乗る少女・メッセにバトンタッチされます。喰らえてこのメッセって子は子供っぽい思考で身の回りのこともあまりできないお嬢ちゃんなんです。
広くお勧めするSFラノベです。これは良いですよ。
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