蒸気と錬金【ライト文芸感想】

蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale
著:花田一三六
イラスト:パルプピロシ
出版:ハヤカワ文庫JA

  StealchemyFairytale

アマゾンのあらすじより

私は彼女と異界へ旅立つ
すべて、大傑作を書くために
ポンコツ作家と毒舌幻燈種の
蒸気錬金妖精譚

蒸気錬金術の実用化に成功、急速な発展を遂げつつある大英帝国。ロンドンで暮らす売れない小説家の「私」は食い詰めた挙げ句に、編集者から理法と恩寵の島アヴァロンへの取材旅行を提案される。傑作の執筆を志して一念発起した私は、見知らぬ若紳士から格安の蒸気錬金式幻燈機と妖精型幻燈種――ポーシャと名付けた――を売りつけられ、揚々と旅立ったが!? 蒸気と幻燈がゆらめき、錬金と理法が踊り舞うフェアリーテイル。

感想

蒸気錬金術で大英帝国が発展をした世界の物語です。スチームパンク風味です。
そしてロンドンの売れない小説家が、取材のために太平洋のド真ん中にある神秘の国アヴァロンを訪れた……という体の旅行記になっています、

いやぁ驚く内容でした。まるで産業革命期にかかれた旅行記みたいな文章の作品でした。英語で見かける文章の途中で ―― なんとか ――って書いている箇所をまんま訳した文章がわざわざ出てきます。
翻訳物を読み慣れた方ならニヤっとする仕掛けです。そうでないと……キツいかもしれません。

そして旅行記なので見聞きしたことを書いた体になってます。物語中の騒動がどうして起きたかとか、旅の相棒はなんで優秀なのかとか謎のまま、種明かしがないまま終わっている部分もあります。あくまで旅行記。しかも古い旅行記にありがちな勘違いによる誤りとか誇張を含めた作品です。あえてそういう書き方がされています。人を相当選ぶと思います。

 

ここまでに色々と書いちゃいましたけど私には楽しかったです。
主人公と旅の相棒との掛け合いが、毒舌に皮肉の応酬で面白かったんです。

ロンドン在住の紳士が、主人公なので皮肉とかブラックジョークはよくでてきます。でも旅の相棒は、数段上回る口の悪さなんですよ。

相棒の正体は妖精です。蒸気錬金の帽子をつかうと、幻想種という人工知能みたいな存在と契約できます。それで契約したのが、妖精のポーシャです。
で、この幻想種は、高等なほど自分で判断して自然な反応をする存在です。そしてポーシャはまるで生きているみたいに豊かな反応をするんです。その掛け合いが面白くて最後まで読んでしまいました。

 

終始悪口が飛び交います。こんな感じです。

主人公 「旅行記を書こうと。作家をしているんです。」

妖精 「ごめんなさい。いま、売れない、を付け忘れました。」

主人公 「見通しが甘すぎる。具体性はないし、思いつきだけだし、行き当たりばったりだし」

妖精 「まるで、貴方の生き様ね」

主人公 「ご名答。反論しないよ」

妖精 「おかげで素晴らしい作家人生を謳歌」

主人公 「まったくだ。素晴らしすぎて泣きたくなる」

 

どうです? 口悪いですよね? 
いかにも生意気で分からせたくなるメスガキ系です。
表紙のイラストも素晴らしいですね。ポーシャの生意気なイメージにピッタリです。

またポーシャが口を開けば主人公への悪口だらけなのに危機になると、必死に主人公を救おうとする一面もあります。そういう関係性が分かってくると、バディとしても面白くなってきます。

 

こういう悪口多めでテンポの良い掛け合いが、好きな方にオススメです。

 

蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale (ハヤカワ文庫JA)
花田 一三六
早川書房
2021-02-17

 

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