え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか? 【ラノベ感想】

2024年8月14日

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?
著:下城米 雪
イラスト:icchi
出版:PASH!ブックス

   え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

アマゾンのあらすじより

社内システムをワンオペしていた佐藤愛は、社長交代を機に解雇予告を受ける。
退職後、ファミレスでひとり悲しみに暮れていた愛は、幼馴染の鈴木健太と再会する。
そして健太は彼女を自らのスタートアップに招待した。相手の心に寄り添うために始めた事業、その名も「真のプログラマ塾」。
佐藤愛の熱く、時に破天荒な講義で受講生たちは、少しだけ前を向く。
ストレス社会で頑張る全ての人たちへ。明日がちょっとだけ笑顔になれるお話です。

感想

純度100%の現代お仕事ものでした。追放ざまぁの面白さと、仕事でのお悩み解決なハートフルさがあってどちらも面白かったです。

表紙に映るのは、主人公の佐藤愛です。コスプレして社内SEをやっている時の1コマです。現代社会に魔王が、現れたのかな?と思っていたらまさかのコスプレした。とてもお仕事要素が強かったです。

仕事をなんとか回すために効率化、自動化を追求してたら「一人で回っているし、マニュアルあるなら兼務でいいよね」って主人公が、クビにされる冒頭で始まります。その後、幼なじみと「プログラマ塾」を開いて悩んでいる受講者をSEのスキルと経験で救っていく展開です。
一方的にクビにしたクソ社長が、主人公の有能さに気づいて取り返しつかなくなっていくスカっと展開もありです。

ファンタジーで人気の追放ざまぁが、見事に現代を舞台に生かされているなぁと感じました。また主人公の佐藤愛が、重度のオタながら人を大切にする熱いキャラなのも楽しかったです。

ファンタジーだと有能を追放とかありえなくない?と私は、感じがちなんですが、現代を舞台にするとあるかも…って見えてしまうのは不思議です。ワタミとかみずほ銀行とか現実が、相当アレなので「トラブルないなら保守費とか無駄なコストだよね。はい、カット」が、ありえるなぁって感じてしまう悲しみです。

なお作中にでてくるお仕事のブラックさとか、「プログラマ塾」を訪ねてくる人たちの追いこまれっぷりは、なかなかにキツい描写です。だいぶリアル路線なのでリアルが、キツい状況なときによむとウッカリお仕事を思いだしてしまうかも? 
会社にも家にも安らぐ時間と場所はない。通勤電車内で心を無にする1時間が、唯一の癒やしになっているお父さんのシーンとか思わず目頭が熱くなりました。

 

2巻目・3巻目の感想

メタバースやVRといった技術の未来を感じさせてくれる展開で面白かったです。

オルラビシステムを開発した主人公が、今度はネットを通じて触覚や味覚、嗅覚を体験できるハプティクス技術をつかったサービス提供に挑みます。世界初のグローブ型のデバイスを完成させます。本当に手で触れていると感じるぐらい再現性があるデバイスを造っちゃうんです。

それで推しVtuberと握手会を実現しちゃう展開が最高によかったです。

 

夢みたいな世界ですっごくワクワクしました。

ただこの仮想が現実になるは、5年かもっと早くに実現するかもしれない未来なんですよね。
本当にありそうなストーリーに落とし込まれているのが楽しかったです。

 

加えて面白かったのが2点。

1つはグローブ型デバイス研究者の苦悩を描いたところです。技術で世界を変えたいって思いに人生をかけて研究に没頭するシーンに心をうたれ、そんな人生をかけた研究を主人公にあっさり理解されて、化け物レベル天才との差に苦悩するシーンは涙を誘いました。
そこから苦悩を乗り越えた先あったネットの友情はもう感動ですよ。

 

もう1つはケンたちの技術をどうやって知ってもらい、ビジネスとして利益に繋げていくかの部分です。
ものすごくちゃんとマーケティングしているんです。

本当に手で触れていると感じる再現性があるデバイスって、とんでもなくすごいんです。
でもすごいとビジネスは別物です。世界を変えるインパクトと実際の影響力を発揮させるのは、全く別物なんですよ。

その部分を確かにその手法だったら体験したい。なんだったらお金を出してもいいって思えます。
むしろ私だったらデバイスを購入するから体験させてくれと思うほどです。

 

現代が舞台なだけに主人公の超絶的なプログラミング技術というファンタジーと、それ以外のところはものすごくリアルに寄せて書いてくれたような気がします。本当に実現しそうなお話の組み立てだったので、とても没入感があり面白かったです。

 

なかなかラノベでは、みかけないテーマの作品です。お仕事ものな作品が好きな方にオススメします。

 
 
 

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