後宮花箋の刺客妃【ラノベ感想】
後宮花箋の刺客妃
著:稲井田そう
イラスト:藤実なんな
出版:TOブックス
アマゾンのあらすじより
大国・螺淵【らえん】の安寧のために手を汚す。それが、一鈴【イーリン】の仕事だ。幼い頃に組織に拾われ、刺客として生きる彼女の標的は、先帝の父を殺して即位した現皇帝・廉龍【リーロン】。美しくも残酷と恐れられるその身に近づくため、下級妃として後宮に潜入する。だが、つい帝の虎を狙う賊を瞬殺してしまい、最上級妃である “皇貴妃”に召し抱えられてしまった!? 隙をうかがうも、腹の底が見えない廉龍【リーロン】からの関心(監視?)はいたずらに増すばかり。その上、染みついた悪事への嗅覚と勘で、宮内に渦巻く問題を次々と解決に導いてしまい……? 悪意には強く、善意にはめっぽう弱い少女が、帝の命を狙うほどに周囲から信頼を勝ち取ってゆく、後宮奮闘記!
感想
皇帝を暗殺しようと後宮入りをしたら、意に反して皇帝から予想外に気に入られてしまい……という中華後宮作品です。陰謀渦巻く中、ちょっとした選択ミスが生死を分けてしまう世界観です。けっこう中華後宮成分強めですよ。じっくりと読みごたえがあり面白かったです。
主人公の一鈴と皇帝の廉龍。この2人のキャラの個性と関係性ですよ。ここにグッと引き込まれますね。
一鈴は暗殺者。でも決して犯罪者ではなく、国のため賊を始末する仕置き人みたいなキャラです。そしてまるで自分は人を害することしか取り柄がなくて、それが自分の存在意義だって信じている悲しさも抱えた女性です。でも不必要に人を傷つけないとか、子供を護ろうとするとか心優しい面もある強い娘なんですよね。
一方の廉龍はというと先帝を手にかけて即位する、賊の首を平然と斬りとばすと冷酷な暴君です。だから一鈴に暗殺指令が下るんですが……どうやら冷酷な面と理性的で人の心が分かる面、両面を持ち合わせているみたいなんですよね。
だから最初は廉龍をさっさと倒してしまおうと思っていた一鈴も、ちょっと様子を見るかとなりますし、そうやって一緒に過ごす時間が経ってくると周囲から信頼される。そしてどんどんと暗殺なんてできない環境へと変わっていって、いったいこの先どうなってしまうのだろうと気になります。
読者視点からだと皇帝の過去から察せるところがあります。それでも暴君との評と皇帝の彼が、実際に取っている行動との差は大きくて謎深いです。いったい何が正しいのか? そもそも一鈴に下った指令の本当の意味がなんなのか?そんなことまで疑いたくなってくるほどです。
どうもそこは1巻目だと意図的に隠しているようで、巻末にあるキャラ紹介ではページの一部分が、墨で汚れて読めなくなっています。そんな心憎い演出がされています。
藤実なんなさんがイラストを手掛ける作品って、こういう演出面も凝っている作品多いような気がします。
表紙・挿絵と藤実なんなさんの素敵なイラストも見られて大満足な1冊でした。
中華後宮作品をじっくり読んでみたい方へオススメします。とてもじっくりと楽しめました。
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