シートン動物戦記【ラノベ感想】
シートン動物戦記
著:芝村 裕吏
イラスト:しずま よしのり
出版:KADOKAWAの新文芸

アマゾンのあらすじより
この「動物好き」の軍人は、やがて「獣王」と呼ばれるらしい――
貴族の長男であるシートンは、ミーデシア王国でタブー視される「獣人好き」の噂を自ら立てて実家の家督を継がずに軍人となった風変わりな男。そんな彼が将校として率いるのは、差別された獣人が集中配備された敵国ミーデン共和国との国境の部隊だった。
平和ボケした空気が流れていた最前線だったが、突如敵国ミーデンの大軍が自国領内に侵攻。奇襲を受けた自軍は撤退を余儀なくされるものの、シートン率いる部隊の獣人たちはマイペースなまま。そして、この命懸けの撤退戦において、獣人たちの活躍こそが、シートン自身が生き残るための大きな命運を握っていた。
普段の「獣好き」の振る舞いからトラ系の虎次郎軍曹、イヌ系の麦姫兵長など個性溢れる面々の「獣心」を掌握していたシートンは、これまで見向きもされなかった獣人の戦闘能力を活かした大胆な戦いに打って出る――それこそが、後に「獣王」と呼ばれる男とその部隊の伝説の始まりだとは知らずに。
感想
私の癖にぶっ刺さる柴村さんのガチミリです。設定と描写が細かく現地の臨場感がたまりませんでした。
ミリ好きは大好き(誇張)な撤退戦です。奇策と英雄精神をもって寡兵で戦い抜き、昨日も勝った今日も勝った、しかし後退し続けている戦局です。
燃えるしかない展開ですね。
攻め寄せる共和国軍も余裕なんてなく、お互い全力をぶつけあう本当の戦争です。油断やなめプなんて余地はありません。
本気と本気がぶつかって大変に燃えるミリものでした。
主人公は現場指揮官として、最前線で小隊~中隊規模の戦闘を繰り広げます。戦術級の作品が好きな方へオススメしたいです。
そしてファンタジーならではのいいところです。
獣人がでます。
しかも耳と尻尾だけレベルから全身モフモフまでせいぞろいです。
すばらしい!
ファンタジー作品では人間よりも生物として優れた亜人種が、危険視されて不平等な扱いをうけることがよくあります。本作もそうです。
獣人の肉体は圧倒的に人間を超越しています。剣と鎧の時代であれば人間は圧倒されていたでしょうね。
一方、獣人は規律的な行動や統制は苦手をしています。そのため銃と大砲の時代は人間優位で、獣まじりと見下されています。
また獣人はモチーフとなった動物によって千差万別です。多産な動物の獣人だった場合、圧倒的な繁殖スピードで人間を上回るスピードで増えていきます。主人公の部隊には8人の子持ち鹿獣人がいるほどです。
ですから人類が獣人を警戒するには十分すぎる理由もあったりします。
そういったリアリティーラインの引き方がバッチリで没入感を誘ってくれました。
このような世界背景があってのシートン動物戦記です。
主人公のシートンは獣人に理解があり、獣人であっても友人のように接することができます。すると獣人たちが寄ってきて交流を深めるといっそう獣人に詳しくなります。彼ら虎なら虎、鹿なら鹿の特性をしればしるほど、獣人の強みがみえてくるんです。
その結果、世界で誰よりも獣人のことを理解し、獣人を上手に導けるのが主人公なんですよ。
そんな主人公が獣人の特性を活かして活躍するんですから、面白いに決まっています。肉体的に優れた獣人で近接部隊を編成して敵を殲滅するのは、明治維新期の抜刀隊みたいでロマンに満ちあふれてますね。
他にも草食動物系獣人で偵察とかありましたし、諸兵科連合を獣人だけで実現する方法はどんなのか楽しみでなりません。
それほど獣人に理解ある主人公です。
もちろん獣人たちからの信頼は絶大です。人間であってもシートンだけは特別枠です。
虐げられていた獣人たちが未来の獣王となる主人公の元に集ってきます。獣人たちと協力し、戦いを通じて地位を勝ち取っていく展開がとても面白いです。
くわえて獣王!って盛り上がる獣人に対して、頼られているから力になるかくらいの一歩退いた主人公の感覚もギャプがあって気になります。
戦記物が好きな方は間違いなくオススメします。よいです!
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