戦国小町苦労譚【ラノベ感想】
戦国小町苦労譚
著:夾竹桃
イラスト:平沢下戸
出版:アース・スターノベル
アマゾンのあらすじより
農業高校生(♀)が戦国時代にタイムスリップ!?
「山道を抜けたらそこは戦国時代でした」ばりに唐突に現れたのは、憧れの織田信長。主人公・静子はこの時代で生き抜くために「農業で才を示す」約束を信長にしてしまう。寂れた農村を与えられ、来る日も来る日も農業に明け暮れる静子だったが、やがて本人も気づかないうちに、信長にとってなくてはならない存在=重臣にまで上り詰めてしまってーー
こんなライトノベル今までになかった! 知人に言いたくなる「豆知識」ふんだん系新感覚時代小説が登場。
感想
戦国時代にタイムスリップ女子高生が、現代知識と"たまたま"持っていた現代の荷物を駆使してみたらどうなるか? もしもを楽しめるラノベです。正直に言って作品の構造的に非常にハマる人と、ハマらない人の両極端に分かれるラノベだと思います。
戦国時代の時代背景は、ラノベにしては珍しく史実よりです。例えば織田信長と一般的な呼称でなく、官職名で呼称するなどです。そのため時代物を読んでいる雰囲気に強く浸れます。戦国時代に現代知識を持ち込んで改革というなのチートもしますが、スキルを使って1行に満たない描写でできました!、なんてことはおきません。道具から作って技術を試して、時には何年も試行錯誤をへて自作します。
徐々に技術の蓄積と開発・伝播をするので、必然的に物語の展開もゆっくりとなります。そして桶狭間や上洛、信長包囲網といった歴史的事実も、史実に合わせて派生します。史実に絡めて静子の動きや周辺人物の動きが展開されるため、物語の歩みも巻が進むにつれ、ゆっくりとなっていきます。あとの巻では、1巻で1~2年進むぐらいのペースです。徐々に国を変えて歴史が変わっていく様を感じられると思います。
また本作の特徴的なポイントは、これでもかというくらい技術説明をぶち込んできます。特に序盤の農業描写は濃密です。農業高校で手作業農法の体験かしら、というぐらいに細かいです。発芽させるところから書くラノベなんて初めて読みました。スキルであっさり解決に違和感を感じていた方も納得の細かさでしょう。
ただその細かすぎる技術説明が、くどいウンチク語りと感じるかもしれませn。説教臭さというものでしょうか。この描写は合わない人には、全く受けつけないかと思います。
また技術も細かく説明しようとしているのが災いし、たまたま自分が知っている分野の知識だとツッコミどころが目に付いてしまいます。wikipediaやハウツー本ではそうとし書かれなくても、実践の場では……というのがどうしてもあります。ここはテキトー描写でないが故、書き手には大変なところかと思います。
それから作者も後書きで、本作はご都合主義と明記しています。ある程度リアルに寄せている代わりに、バッサリと物語を肉付けする箇所をご都合主義にしています。なんで女子高生がF1種の種籾なんて持っているの?とか、機械工学や冶金技術の知識がスマホに入っているの?など力業で片付けているところは多いです。巻が進むとマンガのキャラなの?という程の達人も味方で出てきたりもします。
結構リアルそうで実はエンタメ小説です。まず1-2巻まで読んでみて、面白いと感じるかどうか試すのを推奨します。もし合えば続刊をポチってみてください。
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