2023年1月10日
KADOKAWAのラノベレーベルの一つに、NOVEL 0(ノベルゼロ)がありました。まずこのレーベルの記事を見ることがないので、感じたところをまとめてます。
具体的な販売数量のデータをみたことはありません。それでも明らかに人気はなかったと思われ、「私は嫌いじゃないけど売れないだろうなぁ」な個人の感想を当時のネットではよく見かけていました。当時書店に行ってもノベルゼロがそもそも入荷しない悲しい出来事があったり、取り扱いがあってもラノベ棚に置く書店と文芸棚に置く書店とバラバラで発見できないなんてのもあるぐらいでした。
下記は2021年6月に「ノベルゼロ」でgoogole検索した際のサジェストです。攻めすぎたレーベルだったので、みんなの思いは……だったのでしょうね。
レーベル傾向の移り変わり
2017年3月に出た作品までは、設立時のコンセプトから大きく変わっていなかったように感じます。
これが2017年4月から徐々に路線変更され2017年終盤では、大人をターゲットにした文芸的な作品がなくなってきました。その代わりに若い世代を意識したのかラノベ的な平易な文章の作品が主流となり、web投稿作品やアニメ作品の書籍化やジュブナイルポルノと変わらないような作品の投入が図られ、終焉へと向かっていきました。
個人的にこのあたりで傾向が変わったのかな?と感じた作品たちです。
①2017年4月15日刊 「歌姫島の支配人候補」
発売順にノベルゼロ作品を並べていくと本作以降は、白い表紙の作品が大半を締めるようになってきます。稀に黒やピンクの表紙が混じるものの、レーベルとして並べたときの統一感は出るようになりました。本作の表紙が白になったのが、作品が持つ歌姫のイメージを表しているのかと感じるところもあり戦略的なのか、偶然そうなったのかはよく分かりません。
②2017年5月15日刊 「オカルトギア・オーバードライブ」
内容の傾向的には、スチームパンク感のある気持ち重めなラノベです。基本的なところはこれまでのノベルゼロ作品からうけるイメージと大差ありません。ただラストの315ページ目に挿絵があります。ノベルゼロって挿絵ありなんだと驚いた記憶があります。
③2017年8月15日刊「ワールドエネミー2不死殺しの王と王殺しの獣」
2017年6月の1巻目では挿絵がありませんでした。結局挿絵はない路線だったのか?の疑問が、挿絵OKなんだとハッキリ分かった瞬間です。なにせ1作目では1枚もなかった挿絵が、ワールドエネミー2では2ページもあったんです。もうこれはOkですね。
④2017年9月15日刊 「美人上司とダンジョンに潜るのは残業ですか?」
web投稿作品からの書籍化です。読んだときは、とにかく驚きました。読みやすさ・分かりやすさ・面白さを前面に押し出したラブコメ作品です。これまでの作品と毛色がどうみたって違います。挿絵もあたりまえでスニーカーやファンタジアの作品が急にぶっ込まれたぐらいのインパクトでした。
この作品は面白くて人気がありました。とんとん拍子で続刊が発表され全3冊が刊行されました。続編が基本的にでないノベルゼロでは、とても売れたんじゃないかと想像します。以後、ノベルゼロはこんな路線が主流になっていきます。
⑤2017年11月15日刊 「セックス・ファンタジー」
私の中での最衝撃作品です。最速ストレートにセックスを売りにした作品です。フランス書院から出ていたナポレオン文庫に並んでいるような内容です。挿絵も18禁扱いが適切な中身で、このレーベルどうなったのかと戸惑いを感じました。なんというか商業的にはあたったようでセックスシリーズは、全4作品とノベルゼロで最大勢力でもあったりします。
個人的に思ったところ
売れなかったための路線変更によって、これまでの文芸よりな作品を求める読者層から純粋なラノベよりな作品を求める読者層へと変わってしまったなど、レベールとしての特色が分からなくなったところが悪さをしたのではと思います。買う側からすると読み進めてみるまで作品が、ラノベなのか文芸っぽいのかが分からないと手を出しにくいです。限られた時間で読むとなると、自然と敬遠されがちになるかと思います。
さらに記事のその1でレーベルのコンセプトに「刊行時は異世界作品が大人気出会った中、異世界は禁止、主人公は大人の男性、エログロ描写はOK」って書いていますが、じつは学生が主人公の作品もあったりします。2017年12月15日刊の「ハードボイルド・スクールデイズ 織原ミツキと田中マンキー」という作品で、こちらは絶妙な読後感を残す青春小説です。ハヤカワJAあたりで並びそうな硬派作品ですよ。でも買う側には予想がつかない内容でしょうね。本作はシャツを脱ぎかけた下着姿のイラストが表紙になっています。ちょうど1ヶ月前に「セックス・ファンタジー」がでた直後なので、期待して家に持ち帰りこんなはずじゃぁとなった方もいたのではないでしょうか? いくら当時のKADOKAWAで適当なレーベルがなかったにしても気の毒です。せっかく作品が良いのに求める読者層の手元へ届きません。
そうやって延命を図りつつも新刊が出ないので、要は売れなかったにつきるのでしょうね。こういってしまうと身も蓋もないのでちょっと定価に着目してみました。
刊行時からノベルゼロの作品は、他レーベルに比べるとややお高めで数が売れないので当然だろうと思っていました。ところが記事を書くにあたり刊行順に定価(税抜)を左から並べると、思っているほど高くないのが分かりました。
中盤以降は概ね700円を切っています。消費税を入れて700円台におさまるのでスニーカーや電撃に比べて+100円前後とそこまで高くはなかったのではないでしょうか?
末期のノベルゼロの購買層はグチャグチャになっていたと想像します。そこでこれ以上定価を抑えてノベルゼロとして訴求を続けるよりも、初期の文芸よりの購買層と後期のラノベよりの購買層へ向けた作品は、適切なレーベルに棲み分けられるように整理された……のかなぁ。
MFブックス、カドカワBOOKS、電撃の新文芸、ドラゴンノベルスあたりの大判サイズであれば、定価(税抜)が1200円を超えて販売されています。ノベルゼロの定価と比べると損益分岐点が大きく下がりますから、移行してニッチな市場へと対応したのかしらと勝手に考えています。
今の感覚でみるとノベルゼロって内容が濃いのでお買い得ともいえます。幸いなことに電子書籍で、今も読むことができます。初期作品のような尖った作品は、なかなか他のレーベルではお目にかかれないので、興味を持たれた方は是非読んでやってみてください。
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