詩剣女侠【ライト文芸感想】

2023年1月11日

詩剣女侠
著:春秋 梅菊
イラスト:新井 テル子
出版:集英社オレンジ文庫
   9784086803946

アマゾンのあらすじより

主人の仇をとるため、少女は剣とともに舞う――。
中華浪漫活劇!
時は明代。春燕は、舞いながら岩紙に詩句を刻む芸『剣筆』の名門である斐家の令嬢・天芯に仕える侍女だ。
身寄りのない孤児で、売られるところだった春燕を救い、普通の生活と居場所を与えてくれたのみらず、剣筆まで学ばせてくれた当主・士誠と天芯には感謝してもしきれない。
しかし、士誠の死をきっかけに斐家は士誠の妹夫婦に乗っ取られ、春燕は天芯とともに夜逃げ同然で旅に出る。
だが、病弱だった天芯は斐家再興の夢を春燕に託し、帰らぬ人に。
そんな天芯の遺言に従い、『七天光筆』と呼ばれる有名な老剣筆家と会うために訪れた杭州の地で、春燕は彼の弟子だという二人の青年と出会うが…?

感想

もともと中国小説のつぶやきを見かけて、作者の春秋梅菊さんのツイッターを見かけたのが切っ掛けです。つぶやきの内容がガチでかなり中国の文化・歴史に詳しそうだったので、出されていた本作も読んでみました。思った通りでガチ中のガチな作品でした。中華の香りが濃厚で読み応えもあって面白かったです。

 

まず作品の舞台を明代と歴史ものだよと言い切っているんです。中華風ファンタジーとか西洋風ファンタジーな作品はいっぱい読んできましたが、実在する国と時代を舞台とした作品ってのはほとんど読んだ記憶がありません。それだけ作者の中華文化への強いこだわりを感じました。私はそんな思いが強そうな作品って好きです。

そして内容はというとタイトルに女侠とあり、イラストも武侠ものっぽいですよね。ものすごく武侠のテイストでありながら中国文化も色濃い作品になっています。それは本作オリジナル要素の『剣筆』って岩紙に詩句を刻む芸が関係しています。

剣で石に刻みつける剣術の要素と、実在する漢詩の意味をくみ取って文字として表す文化の要素が合わさってます。『剣筆』もうっかり実在したと信じたくなるぐらい様式が丁寧につくられていて見応えがあります。歴史とファンタジーのミックスがとても良いですよ。

 

もちろんキャラも魅力的で、主人公は下働きの庶民です。家を乗っ取られたお嬢様に付き従っての流浪の旅ではじまります。ところがイラストまで載っていたお嬢様とは、早々に別れその意志を継いで『剣筆』の道を主人公は歩んでいきます。頼って訪ねた先には水と油というぐらい正反対な『剣筆』の弟子がいて、ともに暮らす中で彼らの戦いが……と王道の展開が待っています。面白かったです。

 

とても凝っていて非常に良い作品でした。歴史的要素が満載で漢詩に興味がある方なら、私の何倍も楽しめると思います。キャラとストーリーも良くてエンタメとしても花丸です。そういい作品なんですよ。
ただどうにもレーベルの他作品に並ぶと目立ちません。本屋で背表紙を見て探しましたけど、漢字4文字だけだと思った以上に目に留まりにくいんですね……。良い作品なので読んでみてください。

詩剣女侠 (集英社オレンジ文庫)
春秋梅菊
集英社
2021-06-25
 
 
 
 

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