冒険者アル あいつの魔法はおかしい【ラノベ感想】

冒険者アル あいつの魔法はおかしい
著:れもん
イラスト:sime
出版:TOブックス

  bokensyaaru

アマゾンのあらすじより

貧しい領主の三男坊アルは、魔法に大夢中──だけど、お金がない! 安い不人気の呪文の書(魔術習得を可能とする古文書)を手に入れ、独自の工夫で研鑽を積む日々。もっと多くの“書”を買い集めるため、“冒険者”となった彼は、仲間の救出で訪れた遺跡で、偶然にも秘された太古の大賢者・テンペストの墓を見つけることに。そこで出会ったのは、自我を持った魔道具【アシスタントデバイス】だった!? 図らずして得た古代文明の知識と有り余る情熱で、噴射【スプレー】や鈍感【スロウ】、知覚強化【センソリーブースト】等の役立たずな術を、次々と強力な技へと昇華! やがては国々の動乱をも収める、王国一の大魔法使いへと成長してゆく。 謙虚堅実な少年が“古より今を創る”王道ロードファンタジー!

感想

魔法の設定が海外ファンタジーを思い起こさせる緻密さで面白かったです。
私はファイヤーボール発射台と化す魔法使いより、状況に合わせて魔法を選び舞台をコントロールする魔法使いが好きなので、アルはまさに好みな魔法使いでした。

このお話の土台となるのは魔法のあり方かなと思います。

魔法の素質があれば勉強と訓練で魔法を発動できる世界です。スキルやステータスは存在しません。
そして魔法は呪文書を理解して覚える方式です。

呪文書を買って新たな魔法を覚えるのは、ファンタジーゲームだとお馴染みの設定です。そこへ呪文書の内容は時間をかけて学習する必要があること、呪文書が痛んでいると学習できず失敗する可能性があることなど海外ファンタジーっぽい濃さがあるんです。

 

あいつの魔法がおかしいと副題につくように、アルは魔法の理解と習熟が周囲と異なります。

呪文書の内容を覚えたら通常呪文は一定の効果で発動されます。誰が発動しても効果は同じなんです。
しかしアルは違います。効果距離を伸ばしたり効果対象を変更したりと状況に適した魔法を発動できてしまうんです。

これは呪文書にかかれている構成と成り立ちをアルが理解しているからです。呪文書の記述をみて効果距離や効果時間を理解し、状況にあわせて換えることができてしまうんですね。
そこで光魔法の持続時間を延長して一晩中の灯りをともすこともできれば、持続時間を一瞬として目潰しのフラッシュとして発動できるんです。

同じ理屈で定番の無詠唱も再現できる理屈です。
魔法の成り立ちがしっかりしていて、創意工夫の幅が広すぎて楽しいです。

魔法の名称がディティクト・マジックやセンス・マジックとなっていたり、呪文にレベルと系統があるあたり作者さんはTRPGユーザーなんじゃないかなって想像しちゃいます。そして持ちキャラはウィザードだったんじゃないかなあ。

 

 

また呪文書を手に入れて覚える設定なので呪文を1つ覚える分だけ、アルが成長したのを実感できます。強くなって冒険で活躍の幅が明らかに広まるんですよね。分かりやすくて上手な設定だと思います。

それから魔法習得での制約が、さらに物語をおもしろくしてくれています。呪文書の入手には高額を払わなければならず、自然とアルが冒険にでてお金稼ぎをする動機になってます。

また呪文習得の大変さが遠回りの苦難を演出してくれます。1巻目でフライの魔法でとある場所にいけば、失われた魔法知識を得られるのが分かります。しかし人気魔法でフライの呪文書は売っていない、あったとしても高価。あと一歩で手が届かないジレンマが面白さを増してくれました。
例え呪文書が手に入っても理解する時間が必要なのも、よいジレンマ要素です。

 

魔法を駆使したアルの大活躍と、とはいえ無双まではいかないほどよさで非情に私好みでした。
ほのぼのしていそうで野外では、モンスターに盗賊と容赦ない世界なのも楽しかったです。3巻目も読みたいです。

 

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Posted by kyoikyoi