アキツ大戦記 【ラノベ感想】

アキツ大戦記 〜竜の国〜
著:扶桑かつみ
イラスト:木野花ヒランコ
出版:GCノベルズ

  akitsu_jou akitsu_ge

アマゾンのあらすじより

「剣と魔法の世界」から「近代世界」への過渡期。
銃と大砲が、剣と魔法の力を越えようとしていた時代。
魔力を持たない只人(ヒューマン)が起こした産業革命は、魔力を持つ魔人・亜人たちを極東へと追いやった。
その一方、追いやられたもの達は極東の国家「アキツ」へと集結。『変革』によって近代国家へと変貌しながらも、只人(ヒューマン)との対立は深まり続けていた。
国交は持ちつつも、互いに相容れない只人(ヒューマン)とアキツ。
そんな中、アキツ軍の偵察隊の鬼(オーガ)・甲斐は、只人(ヒューマン)の大国・タルタリアの雪原で水面下に進む戦争の準備を目の当たりにする――。

懇親会の襲撃未遂以降、声高に「亜人国家・アキツ」の危険性を主張するタルタリア。両国のとの関係は、悪化の一途を辿っていた。
アキツも警戒を強め、タルタリアとの国境近くでの「軍事演習」を計画。
甲斐たち「蛭子部隊」も「特務旅団第一大隊」として再編成され、新兵器と共に現地へと送られる。
移動中の各所で、強まる戦争のにおいを敏感に感じ取りながら「演習」へと向かう甲斐たちが
大陸鉄道の終着点で見たものは、入念に準備されたアキツの要塞だった。

感想

ゴブリンとかオーガが重火器で近代化なんて、こりゃあ読むしかありませんよ。イラストでもわかるように濃厚かつ、ガチ目なミリタリ成分を摂取できました。面白かったです。

ファンタジー世界で産業革命を起こす作品って、私は好きなんですよ。
しかも肉体や魔力に優れた亜人や、人型モンスターに対抗するために人間が近代兵器を生み出し、対抗していくお話は大好きです。とっても燃えます。

そんなところ本作は個性が光っています。

主人公は亜人です。
近代化した人間の軍隊に押されてきた流れがあり、おくればせながら近代化していった亜人視点で進んでいくのが新鮮でした。

剣と槍の時代から亜人は、人間からみたら圧倒的な強者です。それが重火器の時代となりライフルで人間が武装するになっても、オーガには敵いません。エルフも魔法で簡単に人類を蹴散らしてきます。
そう魔力が続く限りであれば。

 

人間側の最大の特徴は数です。魔力切れとなるまで犠牲に耐えられれば勝ちなんです。
魔法を使えないエルフは、人間と大差ありません。オーガですらも魔力がなければ、銃火器で圧倒できてしまいます。

これまでのパワーバランスが逆転し始めて、亜人側も人類の技術を取り入れて変革しているのは、すごく好きな設定でワクワクしました。

 

そして亜人がいるファンタジー世界だから魔法があります。そこで亜人側は蒸気機関とか電機と魔法を組み合わせて、この世界ならではの仕組みを作り上げてます。
ただ人間と同じように重火器や鉄道などを導入したわけじゃないのが、人間と亜人にとって戦闘教義の違いをみせてくれ物語に深みを与えてくれました。

 

本当に細かいんですよ。戦争に至るには歴史背景があります。開戦までの準備期間があります。これら背景や準備に重きをおく作品で、非常に緻密な設定が散りばめられている作品です。
オルクセン王国史をよんでいる読者層だったら、本作も読んでそうな気がします。

オルクセンの場合、主人公は国王で大局的な群像劇として展開していくのに対し、本作の主人公である甲斐は大隊長と現場指揮官です。
そのため泥臭い準備シーンや、最前線で自ら刀を振り回すシーンなど臨場感や爽快感ある展開が、面白いところじゃないかと感じました。

 

特に私が印象的だったのは浮舟の訓練シーンです。浮舟は鉄の箱を魔法で浮かせて、馬車の代わりに人や荷物を運ぶ道具です。
道路状況に関係なく一定のスピードを出せる、なんだったら水上も通行できるチートな道具です。

他の作品であれば浮舟を試行錯誤して開発しました。やりくりして舞台に配備しましたでお終いなんですよ。でも本作は違うんです。

配備された浮舟でちゃんと荷物を運べるか、一定のスピードで隊列を組んで進めるか使い方を学んで訓練するシーンまであります。なんなら浮舟のバージョンごとに動かしやすさが違うから、このバージョンのは重量バランスを工夫してまで描いてくれています。現場の苦労がありあり浮かぶ描写でした。

個人的はとても嬉しい演出でしたね。ちなみにあとがきでweb版に比べて説明の箇所は大幅削減したとありました。
私はこれをしってweb版にも興味がわきましたが、多くの読者はもう説明はいいから……となるでしょうから英断だと思います。webはもっと説明多かったんですね。

 

それから作中に出てくる地名・国名や歴史的事件の数々が、どこかで聞いたものとなっていて元ネタを想像しながら読むのも楽しかったです。
何故か地図は下巻にしか載っていないんですよ。あえて読者に想像する余地を残してくれていたんですかね?
大体は想像した通りの地図でしたが、幌海だけはどこにあたるのがわからずじまいでした。

 

ちなみに主人公側はそもそも人口が少ないうえに、能力に優れた選抜メンバーなだけにキャラ同士の絆が深いんですよね。主人公とエルフの鞍馬なんて、明確な恋人関係として描かれていますし。苛烈な戦場で主人公たちがどう生き抜いていくのか、とても楽しみです。

なにしろ侵略してくる人間側も本気です。手抜きや油断なんてなく全力で仕留めにきてます。
2巻目で戦闘が激しくなったら人間側の優秀な指揮官も登場するでしょうし、どうなるのでしょうね。

 

 

同レーベルの感想も読んでみる

 

GCノベルズの感想

 

Visited 45 times, 2 visit(s) today

GCノベルズ

Posted by kyoikyoi