撃鉄の心臓【ラノベ感想】
撃鉄の心臓
著:てにをは
イラスト:大槍 葦人
出版:NOVEL 0
アマゾンのあらすじより
大戦により甚大な被害を受け、国家の枠が取り払われて“人種のるつぼ”となった日本。巨大犯罪組織ヴィスコンティ・ファミリーの幹部ハイムラ・ユージは、組織に裏切られ殺されてしまう。だがすべてを失ったはずのユージは、気まぐれな死神の手によって蘇った。その傍らには、彼の“心臓”をその身に宿す少女・クオレ。「これはあなたの鼓動なのよね―ユージ、あなたはまだ生きてる。ありがとう」ユージは、自らの鼓動を聞く少女を連れ、後戻りのきかない復讐の道をつき進む。復讐はエネルギーだ。活力だ。納得できない?それで結構!これはヒトも悪魔も聖職者も、声をそろえる復讐賛歌。
感想
物語の概要はあらすじと帯に書かれている内容の、「心臓まで失った男と、心臓だけを得た少女による、心の旅路」の言葉が端的に表しています。マフィア組織に裏切られ殺された主人公は、死神の気まぐれで心臓を失いながら蘇ってしまいます。人外となりながら自らを陥れた敵に対し、復讐をはたしていくのがメインのお話です。
ただ人外の力で敵を蹂躙しカタルシスを得たり、人外となった主人公との壮絶な人外バトル……のようなオーソドックスな展開ではありません。人外になっても死からは逃れられませんし、組織の力は個を簡単に潰せるほど強大に設定されています。そのため自然と追っ手を交わしながらの行動となり、最初から最後までハラハラドキドキが続きます。また場面展開も上手いと感じるところで、良い頃合いで物語の舞台が変わります。これによって展開にメリハリがつき、450ページでも飽きやダレがきませんよ。
物語の雰囲気は徹底してハードボイルドです。タバコ・ウイスキー・音楽といった欠かせない小道具は当然として、洋画でみるような粋な台詞回しも豊富に盛り込まれています。雰囲気タップリです。一節紹介すると「なら結構。ポール・ムニを気取ってトミーガンを小脇に抱えて突っ込んだらええ。」のようならしい台詞の数々です。まさにノベルゼロらしい大人向けのラノベです。
さて本作で重要なキャラとして、表紙カバーのイラストに映る少女・クオレがいます。彼女がいるおかげで展開が殺伐となりすぎず、温かいエピソードにも恵まれるようになっています。彼女がなぜ主人公について回るか、序盤では不思議に感じるかもしれません。それもタイトルである「撃鉄の心臓(クオレ)」の意味を知る頃には、驚きの理由を見ることになるかと思います。
クオレ以外の登場キャラも人やら人外やらと個性豊かで、物語を盛り上げてくれます。イラストにいるチャイナ娘のランホアなんかは、私のお気に入りです。アルテアに至っては……本作最大の謎キャラにして、最大インパクトのキャラかもしれません。
まぁとにかく読んでみてください。これは面白いですよ。
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