腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい【ラノベ感想】

2023年11月8日

腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox
著:てん てんこ
イラスト:葉賀 ユイ
出版:KADOKAWAの新文芸

  腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい 腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい

アマゾンのあらすじより

科学よ、これがファンタジー(理不尽)だ!

戦艦を作りたいのに、鉄が足りない!
気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女性アバターの姿で。
周囲は見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない! いくらSF技術があっても、資源がなければ何も作れない。
だというのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学の"か"の字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい!
これは超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語。

感想

SFだーー。SF世界が異世界ファンタジーに殴り込みます。
面白かった。ランダム生成された惑星を開拓するチマチマ積み上げていくSLG感と、理屈建てたSFの世界観をぶっとばしてくるファンタジー(理不尽)との融合感が楽しかったです。

 

本作はゲームキャラへの転移です。

「はい、指令」(イエス マム)とか、「感情図形」(エモーショングラフ)とか、「頭脳装置」(ブレインユニット)とかうるさいぐらいにルビ満載です。ガジェットにまみれたSFオタクのこころをくすぐりまくる演出になってます。スキルツリーに資源配分といった、惑星開拓系のゲームらしさもたっぷりです。

細かい設定のウンチクが延々と続く設定の濃さなんて、SF好きにはたまりませんね。

 

そしてやりたい放題のSF技術で無双するのかと思っていたら、SF技術チートが通用しないファンタジー(理不尽)にぶつかってしまい、気づいたら異世界ファンタジーの世界観になってしまう作品でもあるんですよ。SFとファンタジーの力関係が、上手にバランスよく描かれていていて面白いです。ファンタジーを理不尽と評するのは、名言ですね。
たしかにミサイル直撃で生きているとか、物理法則無視で理不尽すぎですよ。

 

本作の主人公サイドは、感情を持ったAIがいるぐらい進化したSF世界です。そこで主要キャラはゲーム転移した主人公イブ(ゲームキャラ名キツネスキー)と要塞のAIリンゴの2人(?)です。
このリンゴは「AIらしさ」と「人間くささ」が混ざった感情を持っていて、アンドロイドものを好きな人にはたまらない面倒くささに仕上がってます。

というのもAIは主人公の何百倍も賢くて最適な判断を下せます。でも人間の役に立ちたいという生存理由から「人間に指示される」ことに幸せを感じるんです。たとえその指示にリスクが含まれていたとしてもです。
AIのリンゴ的に不合理と理解していても、人間であるイブの行動を尊重しちゃうんです。こういうSFらしさ大好きです。

それに加えて人間の役に立ちたいが暴走して、主人公のことをリンゴが無意識に甘やかしまくっているのもバディものっぽい甘さで堪りません。疲れているときだったらマスターがお世話させてくれるから嬉しいって感情を持つAI、素晴らしいですよね?

 

あとはインパクトがある表紙イラストについても触れないとなりません。イラストは『バカとテストと召喚獣』で有名な葉賀ユイさんです。狐耳美少女が実にかわいらしいんですよ。

口絵の狐耳美少女たちは、主人公の遺伝子から培養された人形機械です。肉体は有機物、脳は機械。いわゆるアンドロイドですね。元の遺伝子が同じだから5人とも顔がそっくりなんです。
同じ顔のキャラ5人をかき分けていくとか、ベテランである葉賀ユイさんのすごさを感じます。

後半にある獣人用防護服をまとった彼女たち5人のイラストは、最高級にかわいらしかったです。

 

2巻目の感想

ファンタジーとは理不尽ですね。

どうして上空2万メートルの飛行機に矢が刺さるんでしょうか? 生物の骨格が通常工具では切れなくて、プラズマカッターまで持ち出さないとならないんでしょうか?あげく生物の魔石を外したら常識的な硬さになるとか、ファンタジーは理不尽の塊です。

 

主人公たちのSFも理不尽極まりないんですけど、方向性の異なる理不尽同士がケンカして絶妙なパワーバランスを保ってくれています。
1巻目で鉄資源を確保して、主人公の技術も戦力も育ちました。それでも気を抜くことができないファンタジー世界です。

 

ゲームらしく技術を開放していく楽しさも健在です。宇宙開発の技術ツリーを伸ばすか、戦闘系を伸ばすか。手元の資源と開発時間からどっちにするかを悩むのも良きです。

良きとロマン技術の投入もたまりませんね。多脚戦車、レールガンに荷電粒子砲。SFロマンをしっかりぶち込んでくれて、読んでてテンション上がりまくりです。
効果薄ってAIリンゴのストップが入ってしまいましたが、パイルバンカーの実装も待ち望まれます。主人公を甘やかしまくるリンゴも、技術開発となるとシビアなんですね。

さすがにAIには、ローラダッシュで一気に距離を詰め、ターンピックで急制動からのパイルバンカー打ち込みってロマンは分からないか……

 

さて2巻目の主目標は、念願の原油獲得です。

それに立ちふさがるファンタジーとどう付き合っていくのかが熱いです。個人的に主人公が前半でとった「力を見せれば、この後の衝突が減る」の行動が、後半での伏線につながっているあたり、想像しなかったつながりで特に熱かったですね。
ファンタジー勢も手ごわいです。

 

SFとファンタジーでお互いを知らないことから生まれる勘違い要素も楽しくなってきました。是非とも3巻目が出てくれることを願います。

 

 

SF + TS + ケモ耳 + 異世界と属性テンコ盛り。ニッチもニッチな作品で、読み手はどうしても限られてしまうと思います。だからこそ刺さってしまう層には、ドストライクになるはずです。2つ3つ好きな属性がかぶっていれば、読んでみるのはどうでしょうか。

 

同レーベルの感想も読んでみる

KADOKAWAの新文芸の感想

 

 

Visited 49 times, 1 visit(s) today