東の魔女のあとしまつ【ラノベ感想】
東の魔女のあとしまつ
著:中村 颯希
イラスト:toi8
出版:アース・スターノベル

アマゾンのあらすじより
「14年後、勇者レイノルドに殺される」
不完全な予知能力だけが取り柄の魔女・アデルは、ある日こんなとんでもない予知夢を視てしまう。
弟子たちと相談したアデルは、少年時代のレイノルドを攫い、徹底的に甘やかして育てることで、予知を回避することに。
しかし、騙して攫うはずが、結果的に彼を不遇な環境から救ってしまう。
さらには、その際、痺れ薬を顔に浴びたことにより、表情が動かなくなり、喉からは囁き声しか出なくなってしまった。
お調子者ではったり頼りのアデルが、見た目だけはミステリアスで儚げな魔女になったことにより、レイノルドは彼女の言葉や態度を深読みして、どんどん心酔していく──。末弟子を勇者として覚醒させないよう必死に行動するアデルだが、その努力はことごとく裏目に出て、レイノルドはぐんぐんと才能を開花させる。
いつ殺されるのかと怯えるアデルは知らなかった。
末弟子が、始末に負えないほど師匠を崇拝しはじめていることを──。小心者のぽんこつ魔女と一途な執着勇者の勘違いコメディ。
感想
勘違い年の差師弟もの & 年齢の壁をクリアするイベントがおきて、弟子からの恋愛猛アタック。
いいですね。最高に好みな流れです。しかも厄介なヤンデレがいるし。次が待ち遠しい新作です。
大枠は勘違いものとなっています。
主人公の魔女アデルは、「14年後勇者レイノルドに殺される」との予知をみて、だったら少年時代のレイノルドをさらい勇者にならないよう、デッレデレに甘やかしてダメにしてやろうと実行するんですよ。
ところがレイノルド視点だとアデルは無償の愛を注いでくれる師匠にして、母であり年上のお姉さんと至上の女性という解釈なんです。
しかも彼は相手が嘘をついているか分かる能力を持っていて、アデルが嘘偽りなくレイノルドを愛していると確信できちゃうんです。彼女は純粋に死にたくない一心で、勇者として覚醒する目を摘もうと行動しているだけなのに。
このどうしてそうなるの?な勘違い要素が楽しかったです。まじめな展開にサラッとコメディ要素をブチ混み、笑わせてくれる中村さん作品っぽいなあと感じました。
だからお話が重くならずサクサクとよみやすかったです。
そう勘違いなんですよ。まるでアデルって実力がある魔女みたいな雰囲気で、ポーズ決めて表紙を飾っていますよね?
これはおそらくレイノルドの目に映った記憶でしょうね。実際のところアデルはポンコツで、魔女としてはなんとか食べていけるぐらいの実力です。しかもレイノルドの心中をまったく見抜けず、楽観的に自分に都合よい解釈をする始末です。勘違いを加速させた元凶ですよ。
作中のデフォルメイラストこそが、アデルをよく表しているんじゃないかと思います。
まあポンコツなかわりに善良で弟子思いなのは、レイノルドの解釈が正しかったりします。アデルってポンですけど、善良なお人好しなんです。
思いをよせたくなる年上お姉さんの素質は、きっちりと持ち合わせてます。見目も麗しいですしね。
と大枠の設定は勘違いからの年の差恋愛フレームなんです。
それをぶっ壊してお話を混沌に叩き込むのが、レイノルドのヤンデレ気質です。
アデルを至上の女性と拗らせまくったあげく、ヤンデレの目を開花させちゃいましたす。そしてレイノルドは攻撃系ヤンデレでした。
師匠を傷つけるものは当然として、師匠の気分を害しそうな存在の排除すら一切の躊躇がありません。独占欲も非常に高いです。
そのうえ勇者の実力だから誰も止められないんですよ。それこそアデルを失ったら怒りと悲しみのあまり、魔王のように世界を滅ぼしかねないヤンデレさんです。
いやあ面倒くさすぎる存在ですね、レイノルドって。
幸いなことにアデルの幸福を第一にレイノルドは考えているので、彼女を悲しませないように自らの過剰なヤンデレを自制はできるっぽいです。ならば世界の平穏はアデルにかかっているんでしょうね。
鈍感なところをもつアデルならレイノルの対応はOKとして……いつまでたってもレイノルドは弟子という意識が最大の壁になりそうな気がします。
レイノルドの思いが届き、世界の平穏が保たれるか気になります。
それに加えて私が好きだったのが、アデルと弟子のマルティン、エミリーの関係性です。
アデルが師匠です。でも魔女としての実力はたいしたことないんですよね。
それに威厳があったり、年長者として教え導くタイプでもありません。
物語をみている私には、まるで三姉妹だなあと映りました。優しくて善良だけどポンで放っておけないお姉さんと、それを支える弟と妹です。
そしてどっちの弟子もアデルを大好きで、根っこに愛がある会話の数々はとっても温かい気持ちにさせてくれました。
一番弟子のマルティンは苦労人気質で、本当にいい子ですね。しっかりものな長男って気がします。
一番全体を見通していて現実派です。貴重なツッコミ役で実は大物になれるんじゃないかと、私は思うほどです。
普通だったらパニックになりそうな事実をしっても、淡々と受け入れて今できることをこなしていく努力の人です。もともと才能に優れていたわけじゃないのも、彼の努力を際立たせてくれました。まちがいなく2巻目でもっとも苦労を背負い込むことになるでしょうね。
二番弟子のエミリーもとっても、いいこでしたね。彼女もアデル大好きで末っ子みたいな感じです。
詳しくはかけませんが、登場人部紹介にあった「可憐な見た目だが内面は苛烈」の二面性にはビックリしました。それとともに彼女が抱くアデルヤマルティンへの思いには、それなどなるほどと共感しきりでした。愛らしくて手のかかるお嬢様ですね。
一推ししたい作品です。勘違いラブコメが大丈夫な方は、試し読みだけでもいいのでオススメします。
アデルがヤンデレの芽に水を注いじゃったんだから、責任をとって刈り取ってほしいものです。果たしてその刈り取り方がどうなるのか?
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