<本の姫>は謳う【ラノベ感想】
<本の姫>は謳う
著:多崎 礼
イラスト:山本 ヤマト
出版:C・NOVELSファンタジア
アマゾンのあらすじより
「滅日」によって大陸中に散らばった、世界を蝕む邪悪な存在―文字。天使の遺跡を巡り、本を修繕する少年アンガスは、文字を探し回収するために、“本の姫”と旅を続けている。ある日、無法者たちから救い出した少女に、文字の気配を感じた彼は―。圧倒的な筆力と緻密な世界観を持ち、第2回C・NOVELS大賞受賞作『煌夜祭』で話題騒然の多崎礼が満を持して放つ新シリーズ、堂々開幕。
感想
本作にはファンタジー小説での魔法のような神秘的な力として、文字<スペル>が登場します。文字は土地や周囲の人々に大きな影響与える力を持っています。それを主人公のアンガスは回収して世界を旅するのがメインストーリーです。それが後述するもう1つのストーリーと交わり、緻密なストーリーにしあがっています。
またタイトルにある歌は、終始一貫したテーマです。歌が世界に大きな影響をおよぼし、歌姫が重要な重要な鍵を握ります。その歌姫が何故か本の中にいて、主人公は<本の姫>と旅するのです。
とにかく読み応えのある作品です。表現力が豊かで重厚な世界観に飲み込まれます。東部世界と西部世界で文化・風習・人種が異なり、町ごとに様々な特徴があります。巻の最初に世界地図がついていて、アンガスが回る土地を地図と照らし合わせながら読むのをオススメします。
本作の大きな特徴として2つのストーリーが交互に展開される点があります。1つはアンガスの文字を回収する旅です。もう1つは歌が身近に存在する楽園の話です。それぞれ時代も登場人物も別々で慣れるまでは、どう繋がるか分からない別々の話のようにも見えます。それがストーリーが進んで行くにつれ、重なる部分が見えてきます。そして楽園の登場人物がアンガスの旅にどう関わってくるのか、想像するのが面白いです。
2つのストーリーが交互に展開されるので良いところで別のストーリーとなってしまい、続きを読もうとしてページが止まらないのは困ったところでした。
本格的なファンタジー小説ではありますが、ラノベらしさもありキャラは魅力的です。まず主人公のアンガスは理想を追求する平和主義者、理想主義者です。そのせいで何度も危機に陥るにもかかわらず敵を許そうとします。その許しの信念をどこまで突き通すのか、読んでいて気になるポイントです。
ちょっと強気な<本の姫>も古代人?のようでありながら少女らしさもあって可愛らしいです。きっと登場キャラの中で1、2の人気を争うヒロインになると思います。アンガスとのかけあいは読みどころです。
他に脇を固めるキャラも良い配役がそろっていますよ。
骨太のファンタジー小説を読んでみたい時に最適の作品です。
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