不死の魔女は万の命を犠牲にしてもありきたりな願いを叶えたい。【ラノベ感想】

不死の魔女は万の命を犠牲にしてもありきたりな願いを叶えたい。
著:春一
イラスト:ituca
出版:ドラゴンノベルス

  不死の魔女は万の命を犠牲にしてもありきたりな願いを叶えたい。

アマゾンのあらすじより

愛しい1人の命を救うため、1万の魂を喰らい神の領域に至る。

不死の魔女リッチとして、少女の姿で異世界に転生したユーライは、王女を殺し弄んだとして騎士たちに囚われてしまう。拷問を受ける中で「闇落ち」スキルを発動させ、2万の魂を喰らって強大な魔王の力を得るが、同時に討伐の対象に。聖騎士や一等級の冒険者から狙われ、ついには王国1万の軍勢を相手にすることになる。
ユーライはただ平穏に過ごしたいだけなのに、負の連鎖は止まらない。
「愛しい仲間のために、戦うしかないかな」

感想

癖強めのダークファンタジーは大好物で、あっという間に読みきってしまいました。

 

導入は安定の異世界転生です。気づいたら銀髪幼女のリトルリッチになっていました。
そしてよく分からないまま人間とファーストコンタクトしたら、フルボッコからの拷問→回復魔法コンボと衝撃的なスタートです。

それであらすじの「闇堕ち」スキル発動に繋がって、拷問から逃れられたものの……2万の魂を喰らいます。魔王へ超進化です。
ここまでの展開は、ほぼ主人公に選択しありませんでしたね。転生して分からないまま連れさられ、あがいてみたら魔王になっていたって展開です。
別に拷問からは逃げたいけど、2万人もの命を奪うつもりなんて全くなかったんです。

 

しかし結果は命が絶えた無人の街と主人公だけの状況です。

 

これじゃあ「わたしはわるい まおうじゃないよ」といくらアピールしても人類の敵確定ですよね。不可抗力だってわかっていても「おっと力があふれすぎてしまったな」の余波で2万人の街が全滅とか、人類にとってみれば許さない絶対にな、ですよね。

というわけで主人公は人類の敵&討伐対象で確定です。
魔王へ進化後は畏怖すべき存在のオーラだだ漏れで、常人は目にするだけで恐慌状態に陥りますからね。まあ穏やかな異世界暮らしは不可能でしょう。

 

魔王になってからが本作で特に好きなところで、「闇堕ち」スキルの影響で主人公の心にも闇が生じています。そのため主人公には人間を殺す覚悟なんて不要なんです。
だから自分や仲間たちを害する相手は死んで当然なんでしょって感覚です。悪人に人権はないを文字どおりに実行します。
そこからくる大事仲間たちのためにそこまでするかあ??の容赦なさが楽しかったです。

 

それに加えて面白かったのが仲間たちとの関係性です。

登場するのは元聖騎士のクレア、無眼族の魔法使いリピア、獣人ギルカの女性3人です。

それぞれが仲間に加わる経緯は違っていて、中でもクレアはトップクラスに不憫でしたね。
何しろ元聖騎士ですから、本来は魔王を討伐する側です。それなのに魔法の手下となって堕ちた聖騎士として、かつての聖騎士仲間と対面ですもの。
私は主人公以上にクレアは不幸なんじゃないかと思っています。

 

そして意外だったのがクレアって主人公との好感度は高いんですよ。
降った直後は彼女も戸惑っていました。しかしあるスキルの影響で魔王と手下の関係でいるうちに好感度が上昇しています。でですね、クレアの好感度上昇時の仕草がとてもいいんです。

一見するとクール騎士の口調でいながら、「命令なら仕方ありませんね」と主である主人公から「命令」してもらうように仕向けてくるんですよ。クレアと主人公との特別感を押し出してしてくるんです。
しかも求めてくる特別感も段々とグレードアップしてきますからね。今後仲間となる女性キャラが増えてきたときの様子が楽しみでなりません。

 

いちおう転生前の性別は男性でTSではありますが、TSでの葛藤とか女性への下心が強いとかもありませんね。
男性読者がみていて違和感を覚えにくい女性主人公、という立ち位置ぐらいなんじゃないかと思います。
あと15歳で転生したのもいい具合で、主人公の女性関係のスキルはゼロです。しかも女性への下心も薄めです。適度な百合百合しさも人によって感じられるんじゃないでしょうか。

 

容赦のないダークファンタジーを読みたい方へオススメの1作です。

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