オークの樹の下【ラノベ感想】

2025年7月14日

オークの樹の下
著:Kim Suji
イラスト:千景
出版:ビーズログ文庫

  オークの樹の下

アマゾンのあらすじより

内気な公爵令嬢・マクシミリアンは父の命令で、下級騎士・リフタンと政略結婚をすることに。
そうして二人は一夜を共にするが、翌朝には彼の姿はなく、出立の言葉も告げずにドラゴン討伐に出征したあとだった。
それから3年、いよいよ彼が帰ってくると知ったマクシミリアン。
ところが大陸中に名を馳せる英雄となったリフタンに王女との新たな縁談話が持ち上がっていた!
美しくもなく、何の取り柄もない自分など、離縁されるだろう――
ところが、戻ってきた彼はマクシミリアンに予想もしなかったことを告げ!?

わたしのすべてを、愛してくれますか?

話題の“じれキュン”ロマンスファンタジー登場!

感想

韓国の作品でマンガが大ヒット、その邦訳として出版されたのが本作です。
恋愛要素が濃いって評判でとても気になっていた作品でもあります。

やはり面白かったですね。
私が普段読まないタイプの恋愛作品の扉をこじ開けてくれました。リフタンのことが気になりすぎます!

 

くくりとしてはリフタンは俺様系主人公枠だと思いますよ。それにしたって語気を荒げ不快やいらだちをストレートにぶつけてるのは珍しいです。初めてみたくらいかも。

 

リフタンは実直で不器用な騎士なんですよ。
マクシーのことを自分がどれだけ思っていたか言葉をつくして話せば、きっとこんな展開になっていなかったでしょうね。政略結婚であてがわれた公爵令嬢マクシーを生涯の伴侶と決めているみたいですし。

 

ただマクシーの言葉や気持ちが返ってくるまで、じっくり待つほどリフタンは紳士じゃないんですよ。圧倒的に彼には言葉が足りません。
武人らしい武人、古風な俺様系です。オレが護ってやるからおとなしくマクシーはいうことを聞いておけって態度です。

ただそれでいてふとした瞬間にリフタンがデレることがあるんですよ!
それまで俺様系でずっとリードしてきた相手のデレですよ。しかも大柄のイケメン騎士のデレですからね。こんなに好きに決まってますよね。ね?

 

私が普段読む作品は理解ある紳士でヒロインを溺愛していたとしてもちょっとでも嫌がるなら我慢するとか、ヒロインの気持ちが落ちつくまでうちに秘める男性キャラが多かったんですよ。(染井さんのヤンデレ主人公はのぞく)

そんな恋愛ラノベばっかり読んできていたので、こんな感じの俺様系もいいものですね。なんか新たな推しを見つけた気分ですよ。
お互いのコミュニケーション不足からくる“じれキュン”も楽しかったです。

 

 

あとは主人公のマクシーです。シンデレラ系のヒロインちゃんです。

実家でのいらない子扱いされる描写はなかなかキツいですね。完全に萎縮させて心を折りにきてますよ、あの親。
その上、外に出したら恥ずかしいって閉じ込めて令嬢としての教育もうけさせてないんです、ひどすぎ。

恥ずかしいっていって虐待される理由は吃音です。マクシーはおもったように言葉を発することができないんです。
作中のセリフもすべて、つっかえつっかえな表記になっています。

それほど酷い環境で育ったためマクシーは自己肯定感ゼロです。むしろマイナスじゃないかって思うくらいで、リフタンに捨てられるとか、家人に呆れられるとか、なにかあるとすぐマイナス思考をしだします。
しかも会話が苦手だから相談したり、勘違いした相手に本音をつたえることもできなくと負のスパイラルなんです。

でもだからといって護られヒロインでもないのが好きなところです。
女主人としてがんばるぞって奮闘したり、大失敗して勉強をしたりと前に向かってがんばる強さもあるんです。彼女は彼女でとっても魅力的だったりします。

 

 

マクシーは上手にしゃべれない & リフタンは言葉足らず。そんな2人の“じれキュン”です。

気になりましたねえ。この作品はマクシー視点で語られるからリフタンの内心をつかみとれないんです。

とりあえずマクシーを大好きなことは分かります。それでも「どうしてマクシーに惚れたの?」は、マクシーも読者も分かんないんです。
マクシーはかわいらしい女の子なのは間違いないですよ。でもいわゆる貴族令嬢な美人タイプじゃありません。手紙のやりとりで親交を深めていたとか過去があるわけでもありません。
なんで王女様との縁談をことわってまでリフタンはマクシーを深く愛しているのか……気になるの一言につきます。

 

 

ちなみに邦訳ラノベなので韓国らし文化や表現は、どんなのがあるかと気になっていたらあっさり目でした。私が気づけたのはリフタンの推しが強く感情を露わにする様子ぐらいで、韓国ドラマを視ている方だと自然に読めてしまうんじゃないかと思います。
文化の表現が大盛りとなって世界観にひたる中華後宮ものとは違い、本作は徹底してマクシーとリフタンの関係性を魅せるエンタメに特化していました。

 

 

 

最後に注意点を、ビーズログ文庫の単行本作品です。
序盤から性的な描写マシマシで、文庫じゃおそらく出せなかったんだろうなあと思います。ティーンズラブもOKだという方向けの作品です。
もし気になるけどエッチイ展開はちょっと……という場合はそこだけ要注意です。

 

2巻目の感想

やはりリフタンがマクシーを溺愛する理由は、謎なままでした。
1巻目以上にリフタンはマクシーにのめり込んでいました。危険な目に遭わせたくないから城から出さない勢いで囲ってますね。

さすがにそれはマクシーが可哀想だと説得されて、多少の外出を認めてはいるものの過保護さは悪化したような気がします。

 

ということはですよ、それだけリフタンはマクシーを深く愛しているということですよ。そして愛しているからリフタンなりに自制しているのがよく分かりますね。夜がご無沙汰となってもマクシーが疲れていたら、必死にこらえて我慢しようとするんですけど、こんな立派な騎士様が我慢している様子はかわいらしさを感じますよ。

 

大きな変化としては今ではもうマクシーも、リフタンぬきでは生きていけないほど、お互いを思いあうようになったところですね。これまで愛されることが少なかったマクシーにしてみたら、こんなにも不器用な愛情をぶつけられ宝石のように扱われたら、そりゃあ相手を愛しく思うでしょうね。

マクシーが幸せになっていくのは、みていて嬉しいです。いいぞいいそ。

しかもマクシーときたらリフタンや領地に貢献しようと、自主的な行動をとるようになったのも嬉しいところです。意外な才能が発揮されて、きっと自信を持って活躍できる場が広がるでしょうね。
私の好みで護られるだけのヒロインより、自ら選択して行動するヒロインが好きので、これもみていて嬉しかったです。

 

私の好みでいうと縁談を断った王女様のキャラが近かったりします。
なんですか、あの男装したり兵士と肩を組んで酒を酌み交わす姫様は。

まるで主人公みたいな行動力とカリスマ性じゃないですか。この王女様もマクシーをロックオンしているような展開でしたし、嵐のような騒動が起きそうな予感がします。3巻目はどうなるのでしょうね。

 

みていて謎が多い作品です。
そんな中でオークの樹に関する伝説が語られました。

オークの樹のドライアドが英雄を魅了し、恋人になった伝説があるのですね。そしてドライアドは腰に色とりどりの布を巻いて頭に美しい花冠をいだいたと。
うーん、どうみてもリフタンとマクシーをなぞらえています。伝説と2人の恋がどのように繋がるのか楽しみです。

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