青雲を駆ける【ラノベ感想】
青雲を駆ける
著:肥前 文俊
イラスト:3
出版:ヒーロー文庫
アマゾンのあらすじより
「小説家になろう」で大人気の異世界ファンタジー。異世界に迷い込んだ男が鍛冶師の技術を武器に村と大切な人たちのために力を尽くす。
現代日本において、ほんのわずかにしか残らない野鍛冶の技を持つ男エイジ。
気がつけば記憶もなく、見知らぬ場所に立っていた。
そこは鉄器ではなく、青銅器が使われている世界。暮らしは貧しく、技術は未熟な異世界だった。
ひょんなことからエイジは美しい未亡人のタニアと同居することに。二人の距離が近づくのに時間はかからなかった。
隣家に住む猟師のマイク、村の大工フェルナンドなどの村人に助けられながら、エイジは村の試練を受けることになる。
鍛冶師として働くため、何一つ設備も材料もない状態から、三ヶ月で作品を一つ作り上げ、その必要性を認めさせる必要があった。
粘土を集めて窯を作り、炭を焼いたり、原料の鉄鉱石を探しに山を駆け巡ったりと、行うべき作業は山のようにあった。
エイジはやがて村の一員として認められ、精力的な活動を続けていく。と同時に、エイジは領主から目をつけられてしまう。
生きて帰ってこれない、と忠告を受けながらも、労役という義務を果たすため、エイジは単身領主の町に向かった———。
感想
異世界転生ブームのアンチテーゼのような作品です。
もしも一人の人間として中世風(リアル中世でなく、あくまで中世風)の世界に転生して、一芸に秀でた「人間」として生活をしたら、どんなサクセスストリーが自然だろうか?を問うているような気がします。
主人公の現代の野鍛冶として技術を身につけて転生します。田舎暮らしの現代人相応の知識も持っています。そのため鍛冶以外の農業や商業の初歩的な知識はもっています。ただ専門の鍛冶以外は初歩的な知識しか持っていないので、実践の知識はなく物によっては異世界民の方が詳しいこともあります。転成していても実現できることは限定的なんです。
また知識と技術があっても、道具や作業環境など整わなければ何も作れないと、ごく当たり前のことを当たり前として書いています。「○○のイメージからスキルで××」とか「天才的なNPCに知識を伝えて△△」なんて風潮に真っ向勝負を挑んでいます。かなり地に足をつけたスローペースで道具を自作し、新技術を広め生活水準を向上させていきます。
安易な現代知識の持ち込みで環境激変とならないので、私は非常に好きな作風です。
マインクラフトのような順々に技術やアイテムを積み重ねて、共同体を発展させていく類いのゲームが好きな人には刺さるラノベかと思います。なお終始、正ヒロインのタニアさん(妻)とのイチャラブシーンが挿入されます。共同体の発展とタニアさんとの愛を育むストーリーが主軸のでしょうか、それぞれのシーンで作品の雰囲気はガラっと変わる印象です。
1巻目はオーソドックに異世界の状況を読者に伝えて、ちょっとした異世界での成功体験を得ます。今後の連載から見るとほんの助走シーンです。
2巻目・3巻目の感想
2巻目では1巻目にちょっとだけ登場したキャラが、本格的にストーリーにからみだし主人公とタニアさんが主だった物語の展開が一気に広がります。また中世相応の世界観では避けられない、命のはかなさも出てくるのかこの巻です。いわゆる異世界転成モノとは全く違う作風なのが印象づけられるかと思います。2巻では転成先の厳しさで主人公に認識の甘さをつきつけ、3巻目はそんな異世界で人を教え育て来たるべき困難に備えるストーリーです。徐々に出来ることが増えていきます。
4巻目の感想
それまでハッキリと現れなかった敵対勢力が現れます。最初に読んだときは降ってわいたように敵対勢力が現れ、これまで伏線を貼っていなかったのは???状態でした。ラストでは納得できるオチが用意されていて、こういった構成の上手さが本作の強みだと思います。個人的にはラストの収拾の付け方は、甘すぎないかなぁと感じたところ。この辺は好みの範囲なんでしょうね
5巻目の感想
日本へ帰る手がかりを探ることもかね、新たな街へと旅立ちます。ダンテやカタリーナのサイドストーリーもあり、彼らが今後どんな風に成長していくかも楽しみになります。
さてこの巻はシリーズでも屈指の危機に見舞われ、窮地におちいります。一般的な異世界転生なら1-2巻目に遭遇するイベントが、やっときたというところでしょうか。魔法やチートがないと脅威感が全く違います。作中の危機とラストシーンとの対比でアップダウンの大きな巻でした。
6巻目の感想
この巻でのメインとなるお話しは、ネタバレになるのでここでは伏せます。
もう一つの見所は弟子を育てるシーンです。現実でも後進を育てるのは非常に難しいですが、本作は手を取り、仕事姿を見せて訂正に育てるシーンを書いています。ラノベではスキルを得て成長や、修行をして成長していく描写が主流な中、地に足が着きすぎているくらい堅実な描写が大変に良かったです。本シリーズのウリでもあるこんなシーンがまたあることを楽しみにしたいです。
もう一つの見所は弟子を育てるシーンです。現実でも後進を育てるのは非常に難しいですが、本作は手を取り、仕事姿を見せて訂正に育てるシーンを書いています。ラノベではスキルを得て成長や、修行をして成長していく描写が主流な中、地に足が着きすぎているくらい堅実な描写が大変に良かったです。本シリーズのウリでもあるこんなシーンがまたあることを楽しみにしたいです。
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