SF飯【ライト文芸感想】
SF飯 宇宙港デルタ3の食料事
著:銅 大
イラスト:エナミカツミ
出版:ハヤカワ文庫JA
アマゾンのあらすじより
時は人類を過保護すぎるほど守ろうとした機械知性〈太母〉が〈涅槃〉へと旅立ったあとの時代。中央星域の大商家の若旦那マルスは、人柄はよいものの騙されやすく、勘当されて辺境の宇宙港へと流れてきた。行き倒れた若旦那を救ったのは、祖父の食堂〈このみ屋〉を再開させようとがんばる少女コノミ。ふたりは食材の不足、単調なメニュー、サイボーグや異星人という奇天烈な客にめげず、創意工夫でお腹と心を満たしていく!
感想
SF的なガジェットや設定が好きな人にはたまらない小説だと思います。
江戸時代の世間知らずな若旦那が、諸国漫遊する娯楽小説に雰囲気は似ているような気がします。
タイトルがSF飯となっているだけに、食の描写は豊富です。なんですけどSFが前面に出まくっているので普通の飯は出ません。天然物は超高価な嗜好品扱いで、読者に馴染みがある地球上のメニューは、歴史的な産物の扱いです。そのためプラントの合成食や宇宙生物を用いた代用食が、出てくることになります。
といったように作品前編を通して、宇宙ならこうなんじゃない?、地球外の惑星ならこうなんじゃない?のSF的設定にあふれているんです。
あと世界観にちょっと触れておきます。人格を持った機械知性〈太母〉が存在し、テラフォーミングをしたりワープを整えたりと、超技術を人類へ惜しみなく与えてくれています。それはもう人間のためなら、よその星を砕くぐらい人間をえこひいきしてでも。
そして甘やかされた人類は、ついに脅威となる外敵との争いにも勝利をし、空前の繁栄を極めます。ところが〈太母〉のアップデートに限界を生じるときがきます。〈太母〉を喪失した人類にとって〈太母〉の技術は失われ、残されたギフト、ロストテクノロジーとして収集・保護される技術となっています。
そうして限られた技術を駆使して生き抜いている辺境惑星へ主人公が、降り立つあたりから物語はスタートします。
世界観からちょっとした場面の描写まで設定が細かく1巻目は、登場人物を含めて紹介の場っぽい側面があります。宇宙でのちょとした冒険っぽい物語が、動いているのは2巻目からかなぁと感じました。ちなみに冒険っぽいと称したのは、本作が切った張ったのSF活劇ではなくSF珍道中のテイストが全面に出ているためです。設定は「ゴリゴリ」。登場キャラの雰囲気は「ふわふわ」な作品で面白かったです。
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