榮国物語【ライト文芸感想】

榮国物語 春華とりかえ抄
著:一石月下
イラスト:ノクシ
出版:富士見L文庫

榮国物語 春華とりかえ抄

アマゾンのあらすじより

才ある姉は文官に、美しい弟は女官に――? 中華とりかえ物語、開幕!
貧乏官僚の家に生まれた春蘭と春雷。姉の春蘭はあまりに賢く、弟の春雷はあまりに美しく育ったため、性別を間違えられることもしばしば。「姉は絶世の美女、弟は利発な有望株」という誤った噂は皇帝の耳にも届き!?

感想

内気でたおやかな弟と強気で才気あふれる姉の兄弟。それぞれの性別を偽って弟を女官・姉を文官として宮仕えする中華とりかえ物語です。ちょうど『とりかへばや物語』を読んだあとにネット書店のオススメ表示で知り読んだ作品です。
舞台こそ日本と中華の差はありますが、男女入れ替わりのドタバタ間や性だけを理由に自己実現が、適わないままならなさなど男女とりかえならではな楽しさたっぷりで面白かったです。

 

本作のお話は、基本的に姉の春蘭視点で進んでいきます。この春雷がカッコいいんです。
男性だらけの宮中で物おじせずに「私はこれをやりたかったんだ」って突き進みます。知恵は回るし口もたつ。上司の海宝まで巻き込んで痛快な奔放さです。成り上がり系の主人公みたいなたくましさを感じられました。

かたや弟の春雷は、音楽や衣装に明るくて求婚者が出るくらい完璧な美女です。中身は男ですが……
女官仲間との交流や皇女との交流といった中華後宮には、欠かせない煌びやかでジメっとした世界を見せてくれます。当然のように宮中いじめにも巻き込まれます。

 

春雷・春雷どちらのお話も面白いんですよね。
後宮での権力闘争にからんだ陰謀を政治的なシーンと後宮内のシーンを両方を追いかけていけるので、ハラハラ続きでどうなってしまうの?の没入感が強いです。春蘭が出世するごとにトラブルのスケールも大きくなって、全く飽きずに7巻目の完結まで読んでしまえました。

 

個性豊かなキャラが、出てくる本作でもあります。私からは2人だけここで紹介します。

 

1人目は枢密使の海宝で、春雷のせいでお話を通して一番ひどい目にあった被害者だと思っています。上司と部下としての出会いから野望のために協力関係となり、時を過ごすうちに海宝は、なんで男の春蘭を意識してしまうんだ?と段々おかしな方向へ行くんですよ。
もし春蘭が女なら自分のドキドキは、普通なことだと春蘭を確かめようと風呂に誘ったり服を脱がそうとしたり……

で、そんなことをしていたら部下に見られて気まず過ぎる空気になったり、正気になった海宝が叫び声をあげたりとかなり気の毒な場面の多いお方です。上司部下としての絆が、深まるごとに男女としてはどうなのよ?と気になり通しな2人でした。

 

もう1人は春雷が仕える皇女・莉珠です。この子は最初からかわいそうなポジで皇女といっても公主の娘です。皇后の実子じゃないので宮中では、いわゆる腫物あつかいですね。それで賢い彼女は、自分と関わると迷惑をかけるからと寂しく過ごしていたんです。
それだったのが、春雷と出会って莉珠が、蘭蘭と愛称で呼ぶぐらい親密となり、変わっていくんです。愛でたいですわ。
そんな莉珠から春雷へ『自分には嘘をつかないで』と追われるシーンなんて大葛藤のシーンでした。強く印象に残っています。

いやぁ初対面時は、「私は孤独な皇女(デケデーンと壮大な効果音が付きそうな仕草)」と壁をつくっていた莉珠からは、想像がつかない親密な2人でした。

 

性別を偽って入れ替わった2人が、宮中での入れ替え生活を経て最後にどんな決心をするのか?気になった方は、どうぞご覧ください。1冊のボリュームは、300ページちょっとと読みやすいですよ。

 



 

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Posted by kyoikyoi