我もまたアルカディアにあり【ライト文芸感想】

2023年1月10日

我もまたアルカディアにあり
著:江波 光則
イラスト:エナミカツミ
出版:ハヤカワ文庫JA
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アマゾンのあらすじより

「我々は世界の終末に備えています」そう主張する団体により建造されたアルカディアマンション。そこでは働かずとも生活が保障され、ただ娯楽を消費すればいいと言うが……創作のために体の一部を削ぎ落とした男の旅路「クロージング・タイム」、大気汚染下でバイクに乗りたい男と彼に片思いをする不器用な少女の物語「ラヴィン・ユー」など、鬼才が繊細な筆致で問いかける、閉塞した天国と開放的な煉獄での終末のかたち。

感想

じっくりと味わいたい重厚なストーリーのSFでした。
「アルカディア」を軸として、いくつものストーリーが積み重なっています。各ストーリーでは主役が変わり、時代が異なり、行動の目的がバラバラになっていて、一見すると短編が続いているように見えるかもしれません。そこで1つのストーリーへとつなぐキーとして、姓が「御園」のキャラが必ず登場してきます。ストーリーが重なっていくと、「御園」をキーとして「アルカディア」とは何かが見えてきます。実に巧妙なしかけを組んだと思います。
中盤あたりまではあえてゆっくり読んで、前との類似性を振り返りながら読むと、作者があちこちに散りばめた仕掛けを発見できより楽しめるかと思います。

それだけで短編が書けてしまいそうなネタを、各ストーリーごとに惜しみもなくつぎ込んでいます。ものすごく贅沢な作品だと思います。
またラストで読者が感じていただろう謎について、しっかりと謎解きを用意してくれていてエンタメ的な作品でもあります。スッキリとした読後感です。

ラノベだけでなくSFに興味をもって、何を読もうか探している方にオススメする作品です。
 
 
 

 

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