四度目は嫌な死属性魔術師【ラノベ感想】

2023年1月10日

四度目は嫌な死属性魔術師
著:デンスケ
イラスト:ばん!
出版:サーガフォレスト
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アマゾンのあらすじより

修学旅行中の事故で死亡した天宮博人は、輪廻転生を司る神ロドコルテの手違いにより、手に入れられるはずの特別な力や幸運を得る事無く第2の人生を迎えてしまう。能力も幸運も無い故に、転生先の世界『オリジン』で実験体としての人生を歩む事となった博人は、繰り返される実験の中で『オリジン』に存在しなかった“死”の属性魔術を獲得したが、十年以上の実験の末、悲劇的な最期を迎え第2の人生を終えた。次なる転生のために再びロドコルテの元に戻った博人。だが復讐心にかられる博人を危険視したロドコルテに第3の人生においても何の力も与えられずに転生させられた博人は“4度目は嫌!”だと、莫大な魔力と前世で獲得した特殊な死霊魔術を駆使して、3度目の人生をダンピールのヴァンダルーとして生きていく。第四回ネット小説大賞受賞作品!!!

■感想

異世界転生を題材としながら、既存作品との差別化を強く意思しているところが面白く感じ、読んでみました。まず異世界転生について輪廻転生のシステムとして、なんで転生するかをキッチリ説明してくれます。そうなると一度死んで次の人生があるのだから、その次もあるのでしょ?の疑問に答えるように2度目の転生があります。複数回の転生で過去の積み重ねが生まれ、神との関係性も明確になり上手い書き出しだと思います。
 
また主人公が迫害のスタートにとどまらず、赤ちゃんスタートなので動けない、まともに冒険できないとかなり極端です。また仲間になるのはことごとくアンデッド縛りとなっているので、普通の冒険者とは敵対する流れとなってしまいベリーハードモードでのスタートです。
 
ないない尽くしのところからスキルを手に入れ、頼りない仲間が徐々に強くなっていく。このだんだん強くなっていっている感、これぞラノベの楽しさだと思います。
 
タイトルが死属性魔術師なので血生臭かったり、倫理的にどうなの?というお話からは避けて通れません。ある程度、異世界作品を読んで違った作品を読みたい方にオススメです。なおサーガフォレストの方針なのか、ラノベにつきもののカラーイラストページがありません。キャラのイラストイメージは、マンガ版読むと良いと思います。コミカライズでの情報の取捨選択が上手で、絵も丁寧なので正直言って本作はマンガ版を推奨します。
 
その理由は以下で……
作品としても面白さが1-2巻までで頭打ちなんです。差別化するための仕組みを出し切ってしまったのか、3巻以降は巻が進むにつれて没個性化していきます。「オークやゴブリンが女性を繁殖のためにさらう」「味噌・醤油・マヨネーズ・リバーシ・将棋を作って、主人公SUGEEE!」「魔素や並列思考などのスキルや固有名詞」、その時のトレンド作品が見えてきそうです。連載時はともかく書籍化にあたって削った方が、いっそスッキリしたのでは?
 
それ以上に読んでいて辛いのが、文章の弱さです。スキルと数字に説明を任せすぎているんです。
キャラの強さは数字化で表現。技術や道具の創作の創意工夫は、スキルにこじつけ理由を渡して、ハイできました。読んでいて平坦です。
周囲のキャラが作中で動いていていると、キャラの掛け合いや個々のキャラのシーンで深みができて楽しいのですが、そういうのも後半ほどありません。主人公を持ち上げる信者となっています。一見危機?みたいな展開も完勝しかしないので、何度も見せられると飽きますよ。
 
 
でもって説明すべきことは雑に片付けながら、いらないところは冗長に説明します。冗長の例をあげると主人公の動きに対して、すぐ次の章で別キャラの視点にうつし、心情を含めて全て説明してしまうとかです。あえて書かずに伝えたり、間を置いて読者に読み取らせるなど、仕掛けが乏しく残念です。
マンガの方だとこの辺が上手にアレンジされていて読みやすいです。
 
せっかく4-5巻でなぜ転成させるか? 神の思惑など重要なシーンについても、一気に出てくるので後付け説明だろうなという印象しか残りません。もし最初の構想からあれば、序盤で伏線として入れておくだけで、作品の面白さは全く異なっただろうと思います。
 
6巻まで読んだ感想として、もし読むのであれば表現が巧みなマンガ版を強くオススメします。
 
 
 
 

 

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