カノンレディ【ラノベ感想】

カノンレディ
著:村井啓
イラスト:※kome
出版:サーガフォレスト

  カノンレディ

アマゾンのあらすじより

王国の武器商の跡取りとして生まれ育ったエリザベスは、ひょんな事から軍人としての道を歩む事を決意する。しかし女性が故に、軍隊への入隊志願を受け付けて貰えず、終いには家を継ぐ気が無いと判断され、彼女の父からも勘当を言い渡されてしまう。エリザベスは最後の手段として、実家から大砲を盗み出し、隣国の紛争地帯に乗り込み、実戦で戦果を挙げ、地方領主様に砲兵士官へと取り立てて貰うという、無謀極まり無い作戦を決行する。血の繋がらない妹も巻き込み、故郷を出奔するエリザベスは、己の野望である軍団長の座へと上り詰めることが出来るのか!?

感想

ガチでミリタリーオタクを刺しにきたオルクセン王国史と同じく、こちらもガチガチミリタリーでした。しかも近代での砲兵特化と根っこが濃かったです。
ただミリタリ詳しくない人も楽しめる味付けになっていて、分かる人は余計なところでニヤニヤできるたのしいバランスです。あっという間に読み切っちゃいました。

なにせ冒頭から楽しすぎるんですよ。

軍隊にあこがれた武器商の娘が、大砲1門といっしょに家出して、持参金(大砲)付きで軍隊入りを目指すって序盤のつかみ時点で買ってよかった!って満足ですわ。
こんな予想もしなかった物語でワクワクが止まりませんよ。

 

女性主人公が男性社会の軍隊とか傭兵団に乗り込んで、衝突しながらも功績を認められて頭角を現していく、熱くてワクワクする展開を砲兵でやってみたのが本作なんです。これをスキルもギフトも存在しない近代世界でやってしまう骨太さがうれしいです。

 

最初、令嬢が軍隊に向かっても戦闘と関係ないところに回されるだけじゃ……という疑問は主人公たちは、大砲を自在にあつかえる砲兵ってポジションで解決されます。ファンタジー作品でいうところのスキルが、砲兵の知識と技術ということなんですね。
令嬢が戦場で大砲をぶっ放すってメチャクチャな部分と、それを実現するための丁寧な理由づけがあって楽しかったです。

 

そして主人公のエリザベスと妹のエレンが仲良しなのも、戦闘シーンの凄惨さを和らげてくれる癒やし要素でよかったですね。姉妹愛は素晴らしい!

母違いの姉妹で父親ときたら跡継ぎのエリザベスだけ心配しているシーンが不憫でしてね……。そのあたりに気づいているエリザベスがエレンにみせる思いやりには心を打たれます。エレンは姉と違って軍人になりたいんじゃなく、姉と一緒にいたいで家を飛び出してきてますからね。姉妹そろって幸せになってほしいものです。

 

 

さて最後はメインテーマのミリタリ部分です。
文句なしに最高でした。戦列歩兵がいる時代の砲兵戦闘をこれでもかって描いてくれました。魔法抜きでお互いの居場所をさぐりあう対砲兵戦をやるラノベって初めてでは? しかもいきなり反射面陣地の戦い方をブチこんでくるガチさですし。

そして歩兵と騎兵の運用もキッチリからめていて、この状況ならどううごく?の妄想が楽しくてしょうがありません。
加えて敵が優秀で合理的なのも嬉しい限りです。優勢だからとナメプなんて一切なく、理詰めできっちり攻めてきます。奇襲したり無力化する策をとってきて手抜きなしですよ。

 

そんな不利な状況を外様として加わった砲兵令嬢が、どうやって勝利へ導いていくか熱くておもしろいです。
戦争物なのでそれなりに悲惨なシーンもあります。人を選ぶとは思います。それでもとんでもない熱量を感じる作品です。

ミリタリーなラノベが好きな方は買ってください!きっと満足します。

 

 

 



 

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