あなたの未来を許さない【ラノベ感想】
あなたの未来を許さない
著:Syousa.
イラスト:jimao
出版:PASH!ブックス
アマゾンのあらすじより
運動も勉強も人間関係もダメな女子高生、御堂小夜子。
彼女はある晩、二十七世紀の未来人から大学の“教材”として【対戦者】に選ばれた。
【対戦者】には特殊な力が与えられるはずが、小夜子の能力は無効化でも消去能力でもなく「何も無し」。
そして【対戦者】との殺し合いに巻き込まれる。能力者相手に抗う術など無く、毎夜を生き延びるためだけに足掻く小夜子。
だがある夜を境に、彼女は戦うことを決意するのだった。
感想
とんでもないデスゲームものでした。
いきなり未来人からキミ、未来に何も影響与えない人間だから今晩からデスゲーム参加ね、ととんでもないですよ。
そこでのデスゲームは文字通りのデスゲームで、相手が死ぬか時間切れになるまで出られないときています。
ごく普通の女子高生が急に相手を殺せなんていわれても……無理に決まってますよね。
まあ対戦相手もおなじように巻き込まれた現代人だから、対話することで時間切れを狙う決着も用意されています。
序盤だったら。
というのもデスゲームには最後の一人になると恩恵があるんです。だから恩恵に目がくらんだ参加者であればノンストップで相手を殺しにきます。中には最初からやる気マンマンな参加者だっていますからね。
ここらの現代人がいきなりデスゲームにぶちこまれて、最初は協力して回避しようと平和的な解決を狙う参加者がいても、次第に好戦的な参加者に押し負けてしまい最終的にやらなきゃやられる。先にやってやるんだって変質していくデスゲ描写が見事でした。
見事だからみていてストレス感もなかなかでした。いやーエグい。
そこに輪をかけて酷いのが、未来人がデスゲで相手を殺せと人の気持ちを考えずに追い立ててくるのと、参加者に与えられる能力の不平等さです。
能力を使っての現代異能バトルというには、あまりにもバランスが悪すぎますよ。相性が悪ければ完封されてしまうぐらい能力に差がありますし、能力の制限もまた酷い設定が多くて悪意だらけです。
何しろ主人公は文字通り能力が「なし」なんですから。能力を与えられなかった理由も胸クソの極みで、きっと読んでいくと未来人へのヘイトが溜まりまくるだろうと思います。
能力バトルのデスゲとしては、能力なしの主人公がどうやって殺人技を身につけた参加相手に立ち回るのかをみて欲しいところです。
自動車を軽く吹っ飛ばせる能力者持ちにどう立ち向かうのか? 殺意マックスな参加者からどう逃れたのか?
覚悟をきめた主人公の立ち回りには、ゾクゾクするものがありました。
デスゲ要素の他に人との絆も本作で重要な要素です。
それが主人公小夜子と親友の恵梨香の絆です。
上巻の表紙に映るのが小夜子で、下巻が恵梨香です。
なんで血に汚れながら手を繋いで微笑んでいるんですかね?
小夜子にとって恵梨香は、自分の身を犠牲にしてでも護りたい親友なんです。デスゲで勝ち残る覚悟を小夜子が固めたのも、全部親友である恵梨香のためなんです。
デスゲの裏にとてもドロっとして重い感情も込められています。
ここらまでを上巻で把握してから下巻に入ると、表紙の意味を理解できるようになりうわーーーと衝撃を与えてくれるだろうと思います。
重めの愛が好きな方へはオススメの展開ですよ!
あとそれ以外に主人公と未来人の交流も面白かったりします。
最初は主人公をモルモットとしてしか扱わない未来人も、主人公がデスゲで生き残る中で会話する機会が増えて人間としての接し方に変わってきます。
ちゃんと向き合って関わるようになると、主人公と未来人には共通点がおおく時代を超えた友情も育まれていくんですよ。
尖った要素が多い上に上下巻組で読むハードルが高いのは間違いないと思います。
それでも読んでみるだけの面白さを秘めた作品です。
表紙を見て気になった方は、試し読みだけでもやってみてください。
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