第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記 【ラノベ感想】

2024年2月4日

第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記
著:甘木智彬
イラスト:輝竜 司
出版:オーバーラップ文庫

  第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記

アマゾンのあらすじより

魔族に故郷を滅ぼされた勇者・アレクサンドルは、魔王と対峙するも為す術なく殺される。
しかし、死んだはずのアレクが目を覚ますと、自らを殺した魔王の息子、第7魔王子・ジルバギアスとして生まれ変わっていた。
魔王に逆襲すべく、正体を偽って理想的な魔族の王子として振る舞う――それは残虐な魔族を演じ、罪なき人々にさえ手をかけることを意味していた……。
だが、それでも。
禁忌を司る魔界の女神と契約を成し、悪逆非道すらも糧として、力を蓄えていく。
すべては魔王国を滅ぼし、人類を救うために――!これは、偽りの魔王子による、国崩しの物語。

 

感想

魔王に挑んだ勇者だけど返り討ち。気づいたら魔王の子として転生ですよ。
臥薪嘗胆で魔族に復讐を誓うとかスケール大きくて燃えますね。しかも魔族の王子だから本懐を遂げるまでは、本当は救いたい人族も手にかけざるを得ないと結構なダークファンタジーとなっています。
読みやすくてライトな感じの文章からクソ重シチュエーションをぶっこんでくれます。ダークな展開OKならて一気読みしてしまうんじゃないかと思うぐらい面白かったです。

 

本作を読んでいて特に気になったのは、主人公ジルバギアスと契約する悪魔のアンティです。アンティは例によって強力な悪魔です。それに加えて「禁忌」を犯すことで力を得るっていう権能まで持っています。こいつが魔族でありながら魔王討伐を目指すジルバギアスとの相性がいいんですよ。
普段はギャグキャラめいた軽い感じで、ノリがよいバディみたいな雰囲気です。腐れ縁の付き合いみたいな2人で楽しいです。

そしてアンティは、「禁忌」を犯すことに強い関心を示す厄介な悪魔でもあります。どんな「禁忌」について2人で契約を交わしたかは、読んで確かめて欲しいです。
まぁ結構な頻度で主人公へ心の傷として「禁忌」が、巡ってくるのは先にお伝えしておきます。

 

そうなんです。色んなところでこの作品って主人公に優しくないんですよ。

魔族の母も従者もジルバギアスを大切に扱ってくれます。でもそれは、魔族の価値観に則ってな接し方なんです。
ジルバギアスの中身は、人族の勇者だからちょくちょく納得できないことが起こります。場合によっては本気でちょっと待ってなのもあるくらいです。

結局はいつか倒すべき魔族にすぎないんです。でも、でも育ててくれる身近な存在でもあるんですよえねぇ……

 

いやー非常に嫌らしい展開です。こんなダークな展開がてんこ盛りとなっています。
終盤に出てきた囚われのエルフちゃんとかよくやってくれたもんですよ。人によっては、好み分かれるかもってぐらいダークな展開でした。

 

2巻目の感想

ジルバギアスの一行に心を許せる忠犬リリアナも加わりました。リリアナは、主人であるジルバギアスの傷だけを癒せるという特級な能力持ちです。
ワンコが傷をペロペロしたら傷も治る。なんとも色んなものが、一気に癒されそうな冒頭から始まる2巻目でした。

 

そのあとは相変わらずな嫌らし展開で、魔族の領内に潜んでいた敵対勢力との遭遇戦が発生します。本当なら肩を並べて戦える相手とのバトルですからね。「禁忌」がまた増えていきましたよ。

そしてそのあとは、対戦相手の娘レイラを戦利品としてゲットします。心折られきった娘に「自我を壊して、もう何も分からなくして……」と涙ながらに語らせるとか酷すぎです。しから挿絵には、無邪気な忠犬リリアナの表情も混ぜるとかさぁ……イラスト込みでやってくれますわ。
ジルバギアスと読者の心情へのダイレクトアタックで刺してきます。なんとも真っ黒なダークさでした。

 

こうやって感情を病ませてきてから感動的なエピソードもやってきたりします。勇者時代の聖剣と邂逅するエピソードとか、レイラと父の別れのシーンとか感動方向にも心情をゆさぶってくれました。
まさに感情を上げて落としまくり。引き付けられるお話しで面白かったです。

 

また2巻目ともなると魔族側のキャラだちが深まってもきています。人類の敵である魔王は、よく見ると理性的な統治者で苦労人なんですよ。ジルバギアスをかっている様子で魔王とは分かり合えてしまえそうなぐらいです。
なんですけど最終的に倒す目標なんだというこの辛さよ。

ちなみに初回封入特典の書下ろしストーリーを読む限り、『眠り姫』トパーズィアも『おてんば放火姫』ルビーフィアもジルバギアスと兄弟との会話は、成り立たなそうな気配濃厚です。完全に思考方法は、魔族的価値観でした。

 

あとはジルバギアスが、魔族との戦いに身を投じるきっかけとなった幼馴染とのエピソードも出てきます。どんなのだったかは、伏せます。ただ相当な嫌らし展開だったってのは間違いないですよ。

 

3巻目の感想

3巻目もまた嫌らしい展開でした。元勇者のジルバギアスの前に人間の勇者を持ってきちゃいますか。
しかも勇者の名に恥じない立派な若者で、彼のすばらしさをたっぷり読ませておいてからジルバギアスとの対決を持ってきちゃいますか。

禁忌を犯すほどに強くなるからって、ジルバギアスに厳しくて嫌らしい展開です。そんなとこも含めて面白かったです。

 

それから配下が増えたのも楽しかったですね。本作では珍しいノリと調子が良い3バカトリオで、まるで魔族サイドの清涼剤です。でもそんなヘッポコさ感じるアルバーオーリルなんて、どうして魔族に生まれたの?ってくらい面倒見がいい兄貴肌なんですよね。思わず好きになってしまうキャラですよ。

魅力的な魔族サイドのキャラが増えて、本当に嫌らしいです。

だってアルバーオーリルとか魔族サイドのキャラが掘り下げられるほど、魔王国を亡ぼすってジルバギアスが悲願を達成するときに禁忌を生んじゃいますからね。未来を想像すればするほどに展開が気になります。

 

4巻目の感想

いちだんと胸くそ展開があって面白かったです。ジルバギアスといえば、この嫌らしい胸くそ要素ですよ。

もちろんレイラがジルバギアスに寄せるLOVE感情とか、レイラがボン=デージ名匠の皮衣装を着たセクシーシーンとかファンタジーラノベならお馴染みな名シーンもありました。いかれたリッチの死霊術士からも強烈なLIKE感情をぶつけけられて、ジルバギアスの嫁増えちゃうの?と楽しいシーンは色々ありました。

でもそれで済ませてくれないのがジルバギアスです。アルバーオーリルくんときたら、弱者を助けるためにビッグになるって魔族らしくないことを誓っているんです。人間の勇者と考え方はいっしょですよね。魔族滅ぶべしと決意したジルバギアスは、そんな決意をしたアルバーオーリルくんを切ることができるのか?に立場と内心のジレンマでえぐってきます。いずれとんでもない禁忌をジルバギアスが犯すことになりそうな気がします。

そして一番衝撃だったのが、忠犬リリアナのシーンです。基本的に犬なのでしゃべることはなく、これまでは仕草での表現が主だったんです。そこをリリアナは内心こう思っているんだと描くシーンがありました。
言葉にできないからジルバギアスには、この思いが伝わりません。でも読者視点では分かってしまうわけで、うわーーーとさせられましたよ。エグいです、面白い。

 

また人類側のデフテロス王国は、魔族の攻勢を受けて風前の灯火です。5巻目ではいっそう破滅的な戦いになりそうな気配です。
ジルバギアスと人類はどうなっていくのか、ますます続きが気になります。

 

強くなっていく過程が、とても面白かったです。そして主人公をとりまく魔族たちときたら個性的なクセ者ぞろいとこれまた魅力的です。ダークファンタジーに耐性がある方には、強くお勧めな1作です。

 



 

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