異界心理士の正気度と意見【ラノベ感想】

2023年1月10日

異界心理士の正気度と意見 1 ―いかにして邪神を遠ざけ敬うべきか
著:水城正太郎
イラスト:黒井ススム
出版:HJ文庫
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アマゾンのあらすじより

人間は怪異を欲している。
2013年、江ノ島に邪神が上陸した。鎌倉周辺は狂気に沈み、“異界"と呼ばれる特異地域と化している。
誰もが狂気に陥るなか、専門の心理士だけが正気を保とうとする人々の救いだった。女性心理士・間宮純(まみやじゅん)は危険な仕事をしている自覚がありながらも、怪異に魅せられつつある自分を否定出来ないでいた。
純はとある事件をきっかけに無免許にして最高の心理士、島野偃月(しまのえんげつ)と出会う。異界に住み、怪異と対峙し続ける男に純が惹かれていくのは必然であった。

邪神と狂気に陥る人々が織りなす本格怪異譚。

感想

HJ文庫公式レビュアープログラムで頂いた作品です。
ラノベでは珍しめな現代日本を舞台にした怪奇ものです。全4エピソードの構成で心理士が接した依頼人に応じて、それぞれ独立した怪異なエピソードの連作となっています。読み応えがあって面白かったですよ。
 
一言で表すとクトゥルフの呼び声の関連創作です。現代日本をベースにして江ノ島に邪神が現れ、奇妙な出来事が当たり前になった世界です。ディープワン・ユゴスなどクトゥルフ神話ズバリな事件が続けて起こります。いかにもな感じの出来事を匂わせるので、クトゥルフ神話をある程度しっていると思わずニヤリとするようなシーンが多々あります。
舞台を現代日本に落とし込んで、江ノ島が異界と化した突拍子もない設定なのに自然に読めてしまいました。細かな描写や設定がかっちりしていて、文章の巧くて魅力的です。楽しくてあっという間に読めてしまいました。
 
 
ホラー要素が強い作品なので読み手は選んでしまうと思います。1話から3話まではクトゥルフ系創作としては、かなりマイルドな描写です。ホラー系を初めて読んでみるのには、すごくあっている作品だと思います。各話の読後感が絶妙です。その代わりに4話目は強烈でした。クトゥルフファンなら待望の展開なんでしょうけれど、エピソードも文言のチョイスも相当に攻めていると思います。GoをかけてHJ文庫編集部の勇気を感じました。これまで押さえたところを貯めて貯めてはっちゃけた勢いです。ホラーが苦手な方に4話は、さすがにオススメしにくいです。読むのであれば気合いを入れて読んでみてください。
 
予備知識なしで読んでも大変に良質な怪異ものです。そこにクトゥルフの呼び声の知識があると面白さが跳ね上がるような気がします。別に原作を読んだことが無くても、マンガやゲームなどクトゥルフ要素をいくらかでも知っているだけで十分です。本作を切っ掛けに分からなかった単語をgoogleで調べて、クトゥルフの深淵を覗きに行ってみるのも良いかと思いますよ!
 
 
 
 

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Posted by kyoikyoi