八彩国の後宮物語【ラノベ感想】
八彩国の後宮物語 〜退屈仙皇帝と本好き姫〜
著:富士とまと
イラスト:森野きこり
出版:ブシロードノベル
アマゾンのあらすじより
忌み嫌われた黒の国の姫は、後宮へと足を踏み入れ本の知識で謎を解き――
世界には仙山を中心に、八色の特徴を持った国がある。
金国・銀国・朱国・藤国・翠国・碧国・珊国……そして、黒い国「呂国」。
不吉な色と忌み嫌われる黒の国の姫 鈴華(リンファ)は前髪で顔を隠し、書庫に籠もり大好きな本を読んでいた。
そんなある日、鈴華は突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまう。時は経ち、行き遅れと言われる年齢になった鈴華はある出来事をきっかけに仙皇帝妃選びの後宮に行くことになるが、
鈴華は仙皇帝陛下の妃争いには目もくれず、大好きな本を読むため行動をはじめる。
しかし、本を読みたいという行動力と本で読んだ知識によって鈴華は、後宮で起きる事件を解決することに!?
感想
皇妃になるつもりが全くない姫が、後宮に入っておこるドタバタ劇です。こういうのは面白いですね。
しかもその主人公が本の虫で、図書室があるから皇の居城を目指すって面白キャラなんですから。
そんな主人公の鈴華は妹が育つ数年だけ、後宮入りするつもりだったんです。
というのも本人は26歳と適齢期を過ぎているし、本の虫とよばれるぐらい恋愛向きじゃないと自覚しているんです。だから妃として選ばれることはありえないと、エンジョイしまくってしまったんです。
それに加えてこれまで出身の呂国から誰も妃が選ばれたこともなかったこともあり、数年羽を伸ばす気持ちたっぷりできてしまったんです。
一応、妃に選ばれると出身国に繁栄がもたらされるので、後宮ではお妃様争いもあります。
しかし鈴華が生まれた呂国は、皇帝の力を得なくてもほどほどに繁栄して、食べるに困らない国です。ですから国のためにがんばる必要はありません。
そんなだから鈴華は皇妃になるつもりは更々なかったんですよ。
鈴華の強はどこを向いていたかというと読書です。本の虫です。
本だったらなんでも喜んで読むタイプで、図書室に住み着きたいって本気で願うタイプです。
やはり私は本好きなキャラが読書欲にかられて突っ走るお話は、大好きなので本作もすごく楽しかったです。
読書だけが好きかと思いきや、鈴華は読書によって知識が増えていくのが好きだというのも面白いところでしたね。
読書で得た知識を実体験に生かしていくエピソードが色々でてきます。例えば「本で読んだ知識だとジャガイモだと思う。実物は初めて見た。食べて味を知りたい」とこんな感じです。
ものすごく個性的な姫ですよね? なんていうかお姫様っぽくありませんよね。
だもんだから「おもしれー女」認定されちゃうんですよ。
後宮の中にたった2人だけしかいない男性から。
それなのに鈴華は後宮にいる男性だから宦官ですね、とか男性から求婚されてもガン無視とかしてしまうので、益々興味を持たれてしまうスパイラルです。
「おもしれー女」が繰り出す後宮の非常識は面白いですね。
そういった愉快な行動をみせるだけじゃなく、鈴華は本で得た知識から知識と目の前の事実を結びつけて考えるという、デキるところもみせてくれたりもします。
面白くて愛らしい面とカッコいい面、どっちもみせてくれて鈴華はさすが主人公です。
そしてキャラが魅力的なだけでなく、世界設定もしっかりしています。
”金国・銀国・朱国・藤国・翠国・碧国・珊国・黒い国「呂国」”と、八彩国は国名の色にちなんだ個性を持っています。
呂国は肥沃な国土に満ちた国、朱国は赤土でレンガが敷き詰められた国といった具合です。
1巻目で出てこない国はどんな個性を持つ国なのか、どんな姫がいるのか気になりますね。
2巻目の感想
鈴華はまたも、おもしれー女でした。
本を読みたくてたまらない本の妖怪さんだこと。本好きなあまり八彩国の全部の言語を独学で読み始めるって、どう考えても妖怪じみてますよ。
鈴華が後宮にやってきてそんなに経っていないんですよ?
それから鈴華のすごいところは興味が尽きないところですね。気になったら本で調べて、調べたら次の新しいことも知りたくなる。で、調べた中身を過去に読んだ知識と結びつけて、難百年も答えを見いだせなかった課題の解決策にたどり着いちゃうんですものね。
こいつを全くの無意識でやってしまう本の妖怪さんスゴすぎます。
そのかわり知識はたっぷりあって木の実のこととか、ゴムのこととか些細な切っ掛けにきづける洞察力はあるくせに、鈴華にバッシバシとおくられる秋波には全然気づかない……
何故なのか……マオの心中を察したら気の毒でなりません。2巻目は直球も直球のトークをマオはしてくれたってのに。
鈴華は本を読む観察者、傍観者の立ち位置で考えすぎなのよ。早く気づいて、あなたは主人公なの!
2巻目は鈴華とマオ、レンジュの関係性が一気に動きました。あとは鈴華がいつ気づくかってところですかね。
それから謎解きのシーンも科学的な現象・知識が下敷きとなっていて、鈴華だけでなく読者の知識欲も刺激してくれる楽しい展開でした。
作中のネタってミステリー主題の作品でも、そのまんま使えちゃう気がします。トリックとお話の繋げ方は今回も見事でした。
是非続きを読んでみたい作品です。
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