コミケへの聖歌【ラノベ感想】
コミケへの聖歌
著:カスガ
イラスト:toi8
出版:早川書房
アマゾンのあらすじより
二十一世紀半ばに文明は滅んだ。東京は赤い霧に包まれ、そこから戻って来た者はいない。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は、原始的な農耕と苛酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは廃屋を改造した〈部室〉に集まり、タンポポの〈お茶〉を優雅に楽しみながら、友情に、部活に、マンガにと、青春を謳歌する。彼女ら《イリス漫画同好会》の次なる目標は〈コミケ〉、それは旧時代に東京の海辺に存在したマンガの楽園だ。文明の崩壊後を描く、ポストアポカリプス部活SF。
感想
おもしろかったです。
文明崩壊後の世界で同人誌を書いて、コミケにいくのを楽しみにしてよんだところ、そういうお話じゃありませんでした。ある種の表紙サギですね、女子校生がわいわいと同人誌をつくるのを愛でるお話ではありません。
早川書房からSFと銘うって発売されているだけあって、シンプルな展開じゃありませんでした。おもいっきり文明が崩壊していました。
なんといっても作中での文明が崩壊する描写が生々しいんですよ。
魔物とか宇宙人は一切関係ありません。原因は全て、人間同士のおろかな争いです。
戦争が起きて荒廃し、わずかに残った資源すら戦争で使い果たすんです。技術や文明の継承なんて二の次で、食べて命の繋ぐのが精一杯って厳しさです。
村を襲ってくる食い詰めた生存者から、武器を取って身を守らなきゃならないと、厳しさMAXですよ。
文明崩壊の流れがこれってあるかも、ないとはいいきれないって妙なリアリティを感じてしまう作品です。きっと食べるのすら困ったら個人の自由なんていってられず、こんなふうに365日食べるために働き続けるんだろうなあ。
物語はそんな厳しい時代から少し経って、衣食住がギリギリ確保され真面目に働けば食べていける時代のお話です。
だから親からは遊んでばっかり、といわれながらも創作活動をする余裕もあるわけですね。
しかし多少の余裕はあっても厳しい時代です。
同人仲間の友人との立場の違い、そしてその立場の違いが生き方までを左右していました。
部室の中を中心に描かれるのに、そこに村の縮図が存在しているかのような世界の緻密さが面白かったです。
このシーンは何を下敷きにしたのかな?とか、このシーンはこんな意味を込めているのかな?と考察しながらよむのが好きな方へオススメです。
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