俺にはこの暗がりが心地よかった【ラノベ感想】

2023年4月26日

俺にはこの暗がりが心地よかった -絶望から始まる異世界生活、神の気まぐれで強制配信中-
著:星崎崑
イラスト:Niθ
出版:GAノベル

  俺にはこの暗がりが心地よかった 俺にはこの暗がりが心地よかった

アマゾンのあらすじより

「はは……。マジかよ……」

異世界でヒカルを待っていたのは、見渡す限り広大な森。
濃密な気配を纏い、凶悪な魔物を孕んだ大自然だった。

ある日突然全世界に響いた「神」の声。

それは「無作為に選んだ1,000人を異世界に転移させ、
その様子を全世界に実況する!」というものだった!!

――望む、望まぬにかかわらず、
すべての行動を地球の全人類に観賞される特殊な“異世界”。

懸けた命の数さえ【視聴数=ギフト】に変わる無慈悲な世界で、
常時億単位の視線に晒され、幾度となく危機に直面しながらも、
ヒカルは闇の精霊の寵愛を受け、窮地に陥る剣士の少女を救い、
殺された幼なじみの少女の姿を異世界に探して、
死と隣り合わせの世界を駆け抜ける!!

感想

とっても面白いダークファンタジーでした。
どんなコンセプトの作品かを書こうとすると結構複雑なフォーマットです。でも読み始めるとそんな複雑さを全く感じさせません。ついつい気になりラストまで引き込まれてしまう面白さでした。読みやすさも考慮さてていてオススメのファンタジーラノベです。

さて題材としては異世界転移です。上記のあらすじを読むと感じるかもしれませんが、独創的な設定になっています。異世界要素とVTuberの配信数稼ぎ要素が組み合わせです。そういった設定のため転生者は、24時間体制で異世界の生活を地球に配信されています。そしてそれはエンタメ動画のように配信されいます。加えて視聴数が多ければ転生者に特典が与えられる仕組みにもなっています。

ということなので視聴者の興味を引くようにモンスターと生死をかけたバトルをしたり、英雄的な行動をとったりすると特典を得やすい仕組みです。でもその反面命を落としたり傷を負う可能席も高まるわけで、なんとも嫌らしいシステムとなっていますね。
そしてシステムはスキル、ポイントで成長とわざとゲームっぽくされています。転生者は自身の命をプレイ代としてゲームに参加させられ、その様子を地球に強制配信されている状態なんです。しかも大多数の地球の人にしてみたら転生者の苦悩なんて関係なくて、TVで流れるバラエティみたいな扱いなんですよね。

いやぁ嫌らしいシステムです。
こんな下世話なシステムを神様が提供している世界です。人間は神のおもちゃ扱いで娯楽の道具になっています。加えて神様は性悪ときています。転生者を破滅させる罠スキルや罠設定をまでら撒いてくる始末です。
転生に関わる神様の性格が、最悪というのは本作の特徴じゃないかと思います。作中のヘイトを一身に稼いで、悪意たっぷりのシステムアップデートをやらかしてくれます。そしてそこが展開に真新しさを加えてくれる一面も担ってくれたりもしています。

このようなシステムの背景があるためオンラインゲームをテーマとした作品のように匿名掲示板のやりとりもあります。この仕組みが良くできていて本作の複雑なシステムとか、主人公たち転生者の配信を見ている地球側の反応を明らかにしてくれています。そのおかげで通常の文章だけで表現されるよりも格段に分かりやすかったです。
この作品が複雑な構造なのに読みやすく感じる一因かなと感じています。

 

ここからがやっとキャラの感想です。
主人公のヒカルは……はっきりいって不憫すぎて気の毒になりますね。神の采配なのかピンチの状況が続くだけじゃなく、地球からも悪意をこれでもかという浴びせかけられます。だから当然人を避けるようになって孤独の悪循環へと陥っていきます。
この追い込まれ方がキツくて、思わず主人公に「早く気づいて。誰しもが敵じゃないんだよ」って伝えたくなるほど感情移入してしまいました。

また序盤の展開上、生き残るために主人公の戦闘スタイルは、ソロ特化で構成されていってテクニカルなキャラに仕上がってます。忍者みたいな一撃で葬るスタイルとなっていて、戦闘での緊迫感も非常に高いです。スキルと立ち回りを駆使するので戦闘シーンも面白いですよ。

といったところまだまだ本作の魅力は、半分も語れていません。それぐらい緻密な作品です。
ダークファンタジーでかつ異世界転生がOKであれば、まずもって楽しんでいただけると思います。展開が気になって読む手が止まらなくなる作品です。強くオススメします。

 

2巻目の感想

長らくボッチ生活だったヒカルのソロ冒険から一転、リフレイアとの冒険が始まります。銀色級の冒険者で絶世の美女な相棒です。
美女を相方にしての冒険。深まる相棒との絆、そして芽生える恋心……とファンタジーラノベ王道の流れですよ。
あとはヒカルに地球からの声さえ届いて、ちょっとは心を開いてくれればなんですけどねぇ……

どうしても地球から届いたメッセージでヒカルが、うけた心の傷は深くなってしまったためリフレイアからの好意に向き合えずにいます。地球から必死にエールを送る妹ちゃんズの思いもヒカルには届きません。
この辺のもどかしさとか思いつめたヒカルのとってしまう無茶な行動が、気なってしまう非常に面白かった2巻目です。

ダンジョン内の様子もリフレイアとのペア狩りとなって攻略スタイルが変わります。それによって戦闘での立ち回りも変わってきて、変わらずな戦闘シーンの楽しさとなっています。強く成長していく楽しさを読ませてくれました。

そしてリフレイアの正ヒロインらしさも極まっています。こんなヒロインに信頼と好意を向けられたら普通ならイチコロでしょうね。
ヒカルに幼馴染の死という枷がなかったら2人の仲はどうなっていくのか気になります。
あと気になりでいうと闇の大精霊です。1巻目でちょっとだけ出てお休み中ですけど、どのへんで再登場なんですかね

 

3巻目の感想

リフレイアと別れて今度の相方は、これまでにトップ配信者として登場していたジャンヌ様です。ジャンヌ様最高です。かっこよくて惚れます。
ダークファンタジーでガチガチな世界観だってのにだた一人、ジャンヌ様はJRPGの主人公みたいなことをやっているんです。
困っている人がいれば助ける。報酬は求めない。不正は許さない。どう見ても彼女だけ特別なんだってオーラを発しているキャラです。

ジャンヌ様はビルドから尖っていて、ファンタジー世界なのに魔法を一切使えません。そのせいで回復魔法も受け付けないデメリットまでもっています。でも単身で敵に挑んでいくんです。
そのデメリットを補っているのは、引き換えで手にした高ステータスです。なんと彼女は高い身体能力で敵を切り倒す武闘派なんです。それに加えて現代人離れしたメンタルも持っていて、武士みたいな戦場で生きる死生観持ちなのも魅力的です。
また強さにストイックでステータスやスキル以上にプレイヤースキルを重視するゲーマー脳を持っている一面もあります。ヒカルより何倍もラノベの主人公らしいジャンヌ様です。

ただそれだけ強いジャンヌ様でもヒカルとのパーティー相性は、そんなによくありません。強いソロが2人って戦い方です。それも2巻のリフレイアと冒険した時とまたちがった戦闘スタイルで楽しかったです。

これ以外に3巻では、地球での妹ちゃんズによるがんばり…というか暗躍もクローズアップされています。1巻目、2巻目での何故そんな展開になったの?の部分が明らかにされています。まさかの天才ぶりにビックリしました。

そしてビックリといえばヒカルの心が、ついに開くタイミングが来ました。そしてそれを機にこれまで進まなかった恋愛的な要素も見えて決ます。
さあリフレイアかジャンヌ様か、はたまたヤンデレさんか?
修羅場間違いなしな状況で3巻目は、終わっており今から続きが気になっています。

 

4巻目の感想

冒頭から修羅場。3巻のラストであるんだよね?と期待したリフレイアとジャンヌ様の修羅場ですよ。リフレイア可愛すぎです。「この浮気者」まで言っちゃいますか。
一方、余裕な雰囲気でヒカルの腕に抱き着いて、煽るジャンヌ様もまた良いです。まさか本作でこんなヒロインが主人公を取り合うラノベみたいなシーンが、出てくるようになるとは1巻目の展開から想像つきませんでしたよ。

 

これまでヒカルに降りかかった運命が、あまりにもハード過ぎました。だから4巻目でヒロイン2人に囲まれるとか、ダンジョンへパーティーを組んで潜るとか、やっとみんな大好きな異世界展開にホッとするところがあります。
あとは神様の悪意からなんとか逃げ延びて欲しいところですよね。スキルがなくなったら?なんて前振りが、本当にやってこられそうで気になってしまいました。

 

さて落ち着いてきヒカルに変わって、目を離せない展開なのはナナミです。

表紙に描かれた目玉の化け物は、いったい何?ってやつですよ。これまでの印象だと真面目なお嬢さんでしたけど……ナナミも相当にやらかし属性持ちでしたね。これならヒカルといいコンビを組めそうですよ。相性バッチリ。

目玉の化け物をアイちゃんって呼んでモフモフしだしたりするわ、エサがなくなったら自分を食べさせようとしたり、真面目な顔してナナミもぶっ飛んでます。それでいてヒカルにはない思いっきりの良さもあって、ナナミの冒険もまた面白ろかったです。

 

今回も面白くて一気読みしてしまいました。4巻目は電子書籍でのみ刊行されていて、あとがきによると紙よりも電子の方が多いんですね。紙本派の私にとっては、ナナミの表紙を紙で見られなくて残念ではありますが……続きが読めるだけでもありがたいです。次も楽しみにしています。

 



 

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