実質異世界転生【ラノベ感想】

実質異世界転生 〜二千年寝てたら世界が変わってました〜
著:Schuld
イラスト:エカニス・エニカ
出版:ブシロードノベル

  jisshitsuisekai

アマゾンのあらすじより

銀河級現場猫案件の被害者軍人、パートナーAIと母星への帰還を目指す!!

軍属としてテラフォーミング事業に参加していた機械化人(ホモ・マキナウス)のノゾムが仮眠から目覚めると、二千年の時が経過していた――
大規模な通信帯汚染(ネットハザード)の影響で文明から隔絶され、未開の惑星・テラ16thに放り出された状況は、実質的な異世界転生!?

未曽有の大寝坊をかまし一睡のうちにして“銀河級現場猫案件”の被害者になり果てたノゾムは、 パートナーである数列自我知性体(AI)のセレネと共に、テラ16thでの生存、そして数千万光年以上離れた基幹星系への帰還を目指す。
旧人類規格と同等の脆弱な筐体に身を窶し、謎の第二種接近遭遇に翻弄されながら、いざ果てしない旅路へ――。

軽妙な筆致で描かれる遠未来SFファンタジー開幕!!

感想

濃厚なSFです。
SFラノベを愛する方は是非読んでください。

ウサギ獣人やゴブリンが出てきました。そしてライフル弾でやっと倒せる敵をクロスボウで打ち落す理不尽発生です。
あげくにはシャーマンが踊って祈祷をしたらエネルギー供給できると、おいちょっとまてってファンタジー(理不尽)な世界です。

 

でもタイトルの通りで、ファンタジーなのはあくまで実質なんですよ。

 

物語の本質部分は徹底して、SFの論理で成り立っています。一見するとファンタジーっぽく見えますが、そう見える原因はテラフォーミングをしようとしていた時の高度文明に繋がっています。ファンタジー作品の古代魔法文明のところが、2000年前のSF論理になっている世界観ですね。

それだからSF好きならニヤリとする描写だらけです。例えば主人公のノゾムは肉体を捨て、機械化しています。ということは呼吸も睡眠も不要ですし、肉体的な疲労とも無縁です。思考速度も電子化のスピードで「1秒」は、止まっているのと変わらない感覚なんです。
そのため2000年の眠りから主人公が旧人類に似た儀体で目覚めたときに、知覚能力が遅すぎて違和感しかないとか、全力疾走すると発汗や酸欠のためクールタイムが必要になり不便すぎるとか、お気持ちの述べるんです。

あー高度な機械化文明からやってきた人がいいそうなことだよと、私はニヤニヤしっぱなしでした。

 

みなさんは単分子ブレード、振動刃剣、荷電粒子砲、ガウスライフルなんで武装は好きですか?

好きならもう読みましょう。
このあたりのSF概念はバッチリと盛り込んでくれています。

儀体を駆りクールタイム制限を計算しながらのバトルです。もちろん攻勢防壁やデコイが入り乱れる電脳戦もあります。
で電脳は首にある端子へワイヤーを接続ですからね。やってることは完全にSFなんですよ。

 

SFとファンタジーの世界観が融合して、とっても面白かったです。

 

なんで目覚めた世界にゴブリンや獣人が存在するの? なんでファンタジーみたいな世界が成立していたの??
この分からないづくしからスタートして、2000年前の遺物を目指す大冒険です。

遺物にたどり着くことで2000年前の謎が、明らかになっていく展開は熱いです。

 

また登場キャラたちとの関係性も熱いのがいいですね。獣人と庇護者の関係は泣けますし、ゴブリンと獣人の共闘シーンなんかは戦士の絆を感じます。
設定が熱いだけでなく物語の展開も熱いです。つまりとんでもなく面白いってことです。

 

登場キャラのなかで私が一番好きなのは、数列自我知生体のセレネです。表紙だとロボで映っていますが、そもそも肉体をもたないAIです。
ファンタジー世界なら精神生命体にあたるんですかね。

セレネは主人公に対して奉仕の精神で、一心に尽くそうとする様子が愛らしいです。マスターへの奉仕はAIだからイメージどおりでありますね。
でもマスターである主人公を全肯定するのでなく、主人公が無茶をしようたらちゃんと止めにかかりますし、主人公が女性と接触すると焼き餅をやいたりするんです。本当にかわいすぎます。

それでありながら2000年を超える主人公との絆がありますからね。メインヒロインに肉体がないとか、かなりの新境地を読んでいる気分でした。

 

次巻といわず完結までブシロードノベルさん、どうか出し続けてください。

 

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