スープの森【ラノベ感想】

スープの森 〜動物と会話するオリビアと元傭兵アーサーの物語〜

著:守雨
イラスト:むに
出版:PASH!ブックス

  スープの森

アマゾンのあらすじより

ある時は動物、ある時は人間。オリビアの店には今日も、心に何かを抱えた誰かがやってくる。

街から離れた森のほとりでスープ店を営むオリビアには、誰にも言えない秘密がある。
人や動物の心の声が聞こえるのだ。
そのせいで家 族から疎まれ、五歳で修道院に送られるところを養祖父母に拾われ、この店に辿り着いた。

それから二十年、オリビアは周囲の人間に心を閉ざして生きてきた。
しかし、ある雨の朝にびしょ濡れでやってきた元傭兵のアーサーはそんな彼女に何かを感じて……!?
「スープの森」に訪れる、様々な出会いと別れの物語。

森の恵み、動物たち、そして人間――   出会い、ともに食べ、別れ、生きていく。

[登場人物]
<オリビア>
貴族の家に生まれたが、動物の心が分かることを家族に気味悪がられ、五歳で修道院に送られる。
養父母であるジェンキンズ夫妻が亡くなった後は『スープの森』を一人で切り盛りして暮らしている。
「人間は向いていない。動物に生まれたかった」と願い今も周囲の人間に心を開けずにいる。

<アーサー>
貧しい暮らしの中で両親と妹を流行病で亡くし十四歳で傭兵となる。必死に戦い生き抜くうちに界隈では名の知れた存在となるが、二十八歳のある朝「もう、これ以上は無理だ」と突如傭兵を辞め、あてもなく歩くうちに「スープの森」にたどり着く。

感想

出会いと別れ。そしてスローライフな刻の流れ。しっとりとしていて心安らぐお話でした。社会人のみなさまにオススメします。読後感がとても良くて穏やかな気持ちになれますよ。

 

読んでいるだけでお腹が空いてくるスープのお話とか、森の恵みと暮らすスローラーフな雰囲気などがイラストの雰囲気にピッタリで穏やかな雰囲気ですね。この雰囲気感が、なんといっても印象に残っています。
展開上、物語の起伏で悲しかったり、辛いシーンもあります。それでも穏やかさを強く感じてしまうんです。特徴的で面白かったです。

また登場人物も基本的に穏やかで優しさに満ちています。オリビアが街の人を大切に思うように、街の人もオリビアを大切に思う。優しさがグルグルめぐっている感じです。
あと動物の声を聞けるオリビアが、動物たちと接するシーンもまた優しいんです。もうまるで森の精霊と動物の語らいみたいだと感じてしまいました。

 

あとは出会いと別れ、副題にあるオリビアとアーサーのお話です。
この2人の関係性、距離感は絶妙なんです。なにせ2人とも分別があるいい大人ですからね。そして人生を重ねてきた分、背負っている悲しい記憶もどうしたってあるんです……
そのためにお互いに踏み込み過ぎない接し方が、2人にとってのほどよい距離感となっているんでしょうね。

 

相手のことを好ましいと思っています。でもここで踏み込んでしまったことにより、関係を壊してしまうぐらいなら心地よい今の関係のまま長く付き合っていきたい、こんな心情なんですよ。
まぁ人によっては弱気でイライラしてしまう関係かもしれません。でも大人になると……年を重ねてしまうと……オリビアとアーサーのこんな距離感に共感できてしまう気がします。勢いに任せて燃え上がるようにとは……なかなかいきませんよね。

そんな訳で社会人へ向けてオススメします。作品を通して心安らぐ感じがよかったです。
家事を片付けた空き時間にお茶でも入れて、ゆったりと読んでみるのはいかがでしょうか? 雨の日の読書に最適な一作ですよ。

 

 

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