不死を求める者、これを道士と呼ぶ【ラノベ感想】
不死を求める者、これを道士と呼ぶ
著:汰元
イラスト:武田 ほたる
出版:ドラゴンノベルス
アマゾンのあらすじより
奉公下男×瞬間記憶能力! 不死への道を駆けあがる!!
雲に乗り、武術・仙術を使う者――神仙
強さと自由を求め不死の仙人を目指す紫栄大陸の辺境の村にコウという少年がいた。九歳の時、前世の記憶を取り戻した彼は知る。ここは唐王朝時代の中国に似た、仙人や妖魔が存在する世界だと……。
かくして奉公先の息子の下男になった彼だったが、なぜか神仙を目指す宗門、虚礼洞の入門試験に付き合わされ受かってしまう。そしてコウは前世から秘かに持つ『瞬間記憶能力』を駆使し秘伝書を記憶しながら道士として駆けあがっていく――。いざ行かん不死へと至る道へ!
感想
一庶民の少年が切磋琢磨を重ねて、高見へと駆け上っていくファンタジーですよ。私はラノベの基本であり、王道といえるジャンルじゃないかと思っています。
その中で本作は仙人や道士がいる中華風ファンタジーにあたります。
キャラの魅力やバトルに世界観と、色んなものがハイレベルで面白かったです。非常にオススメです。
物語の舞台は唐王朝をイメージした世界観の構築となっています。西洋ファンタジーだと魔法やスキルに当たる部分は、仙道や仙術、武術として表現されています。
そして仙術や武術は修行をして会得するのですが、この設定が凝っているんですよ。
例えるならスキルブックのように仙術の本を読んで会得する方式です。しかし読めばすぐに会得できるのではなく、内容を理解し訓練を重ねて初めて身につけられます。スキルの習熟度を高めていき、習熟度が100%となったら本来の仙術を発揮できるイメージですね。
しかも書物には基本しか書かれておらず、コツやノウハウは師事してもらわないと分からないんです。その上、仙術の書の原本は特殊な仙秘文字で残されていて、強力な仙術となればなるほど学習難易度はあがっていきます。だから修行は大変なんですよ。
それだけ道士として強くなるのは大変です。そこで主人公にはチートにあたる写真記憶能力があります。
これは集中してみたものを写真のように記憶しておく能力で、こいつにより仙術の書を暗記して独学できるのが主人公の強みです。
そしてチート的な能力は転生した主人公が、前世の時からもっていた能力となっています。
なんと日本の元刑事で写真記憶能力を生かして、犯罪者を度々検挙していた凄腕だったんです。それが殉職したとおもったら……転生していたという流れです。
私は序盤にこの設定をみてテンション爆上がりになりましたね。転生設定が美しく生かされているんですよ。
この世界にはギフトなんて転生特典はありません。しかし転生前からの精神的な特徴なら引き継がれていても納得ですよね。しかも転生後の少年らしくない言動も、元ベテラン刑事の経験値があれば納得の立ち回りです。
どうしてそうなったや、だからこうなるの理屈がすんなり頭に入ってきます。それだけお話の組み立て方が巧みで楽しいんですよ。
道士になるため弟子入りするといっても外弟子と内弟子、いわゆる貴族の師弟と庶民の師弟の身分差があります。
強くなるために内弟子から外弟子へ昇格するには、不当ともいえる昇格試験を突破しなければなりません。しかも内弟子からの嫉妬に外弟子同士でも先輩との付きあい方もありますからね。
やはり弟子仲間と信頼関係を築き切磋琢磨するのは、少年が強くなるファンタジーには欠かせないなと感じます。適度に主人公SUGEEEを味合わせてくれつつ、登場人物を主人公の信奉者やイエスマンとしないバランスも丁度よかったです。
こんだけ凝っているところにモンスターハンターみたいな採集&クラフト要素や、仙術を解析・改良してオリジナル技を編み出していく要素までありますからね。とんでもない作品ですよ。
さてバトルの描写だって当然しっかりしています。1巻目だと魔獣とのバトルが中心で戦闘の流れを組みたてるはあっても、駆け引きというのはそんなにありません。間違いなく2巻目以降では対人戦が増えていくと思われますので、技を組みあわせて理屈だてたバトルが好きな方へもオススメです。
過去に読んだ作品ですと『かくして少年は迷宮を駆ける』や『アルマーク』をよんでワクワクしたって方は、よんで間違いありません。
とてもとてもオススメな作品です。
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